研究課題/領域番号 |
20H03375
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 卓見 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (20451859)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | GPCR / NMR / 膜タンパク質 / アドレナリン受容体 / オピオイド受容体 |
研究実績の概要 |
(1) 【b2AR および mOR の各モチーフの構造を反映する NMR シグナルの観測、帰属】 b2ARに関しては、部分重水素化およびチロシン残基の主鎖15N標識を施したb2ARのNMRスペクトルを測定して、残基数に対応する数のシグナルを観測した。各チロシン残基の変異体のスペクトルを測定して、野生型と比較することにより、モチーフ近傍に位置する3残基のシグナルを帰属することに成功した。mORに関しては、膜貫通領域上の6つの残基にメチオニン残基を変異導入したmORのNMRスペクトルを測定して、シグナルを帰属した。
(2) 【各リガンド結合状態の b2AR および mOR のシグナルの観測】 b2ARに関しては、(1)で帰属したチロシン残基のNMRシグナルを、逆作動薬結合状態と作動薬結合状態で観測した。その結果、作動薬結合状態では、いずれのシグナルも逆作動薬結合状態と比較して広幅になっており、モチーフが特定の構造に安定化されておらず、構造多型が存在することが示唆された。 mORに関しては、完全作動薬結合状態と部分作動薬結合状態、およびシグナル伝達活性が向上する変異を導入した状態で、各メチオニン残基のNMRシグナルを測定した。その結果、モチーフの近傍に位置する残基のシグナルが三つ観測され、各シグナルの相対強度がシグナル伝達活性に対応して変化することが観測された。これらの結果から、mORが不活性型、部分活性型、活性型の間の構造平衡状態にあり、各状態の存在割合がシグナル伝達活性を規定していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、b2アドレナリン受容体およびオピオイド受容体の、各モチーフの構造を反映するNMRシグナルの観測、帰属を行った上で、活性の異なる各種薬物が結合した状態でそれらのNMRシグナルを観測する予定であった。 現在までに、これと対応するように、b2アドレナリン受容体のモチーフ近傍に位置する3つのチロシン残基、およびオピオイド受容体の膜貫通領域に位置する6つのメチオニンを導入した残基のNMRシグナルを観測した上で、シグナル伝達活性が異なる状態におけるシグナルを観測して、活性の変化に伴う構造多型の変化を観測することに成功した。 したがって、研究は順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 【活性を変調する変位を導入した b2AR のシグナルの観測】 b2アドレナリン受容体(b2AR) の P/I/F モチーフと NPxxY モチーフの間に位置する L124 への変異導入により、G 蛋白質活性化能を保持したままアレスチン活性化能が顕著に低下することが報告されている (Picard et al. ACS Pharmacol. Transl. Sci. (2019) 2, 148-154)。そこで、アレスチンの活性化に重要なモチーフ構造を同定するために、L124 の変異体のNMR シグナルを、完全作動薬、部分作動薬、各種バイアスリガンドの存在下で観測して、変異導入に伴う構造平衡の変化を調べる。
(2) 【非競合性リガンド結合状態の mOR のシグナルの観測】 薬理学的解析により、複数のリガンドがモルヒネ等の従来の mOR リガンドに対して非競合的に作用して、mOR の活性を正に制御することが報告されている (Livingston et al. Mol. Pharmacol. (2018) 93, 157-167)。非競合リガンドには、受容体のアゴニストに対する親和性と、受容体のシグナル伝達活性を両方変調できるという、通常の GPCR リガンドにはない特徴があるため、その活性制御機構は重要である。そこで、非競合リガンドを添加した条件でNMR解析を行い、リガンド結合部位の同定および構造平衡の変化の検出を行う。
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