研究課題
(1) 【活性を変調する変位を導入した b2AR のシグナルの観測】アレスチン活性化能が低下することが報告されているL124G変異を導入したb2アドレナリン受容体(b2AR)について、完全作動薬結合状態におけるメチオニン残基メチル基およびチロシン残基主鎖のNMRシグナルを観測して、野生型と比較した。その結果、L124G変異体のPIFモチーフは、野生型と同様にon状態である一方、DRYモチーフやTM5細胞内側では、野生型で存在していた構造多型が抑制され、別の構造を取っていること、またNPxxYモチーフには構造多型が存在することが示唆された。したがって、DRYモチーフとTM5細胞内側の構造多型が、Gタンパク質とアレスチンを共に活性化する上で重要であると考えた。(2) 【構造平衡モデルの構築】NMRにより明らかにしたb2ARの動的構造平衡と、先行論文で報告されているGPCRシグナル伝達の数理モデルを組み合わせることで、49個のパラメータから構成される常微分方程式の数理モデルを構築した。さらに、交換モンテカルロ法によりこれらのパラメータを網羅的に探索することにより、先行論文(J. Biol. Chem. (2008) 283, 2949-2961)で報告されている、b2AR発現細胞に作動薬を添加した時のcAMP濃度の経時変化を、シグナル伝達の様々な部位を阻害した条件において観測したデータを再現することができた。以上により、NMRで解明した、GPCRのシグナル伝達活性と相関する動的構造平衡を含みつつ、GPCRシグナルを再現するような数理モデルを構築することができた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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