研究課題/領域番号 |
20H03378
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹内 恒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (20581284)
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研究分担者 |
徳永 裕二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (80713354)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タンパク質 / 薬物 / 動的相互作用 / NMR / 創薬基盤技術 / クリプトサイト |
研究実績の概要 |
本研究においては、化合物と創薬標的タンパク質の運動性を溶液中で評価することで、高活性化合物の創生を加速し、創薬標的の枯渇を解消する「動的構造創薬」の基盤の確立を目指す。タンパク質の運動性に関しては、タンパク質表面に動的に形成される隠れた化合物結合サイト「クリプトサイト」に着目した。クリプトサイトは、タンパク質の約40%に存在すると試算されており、これを活用できれば、昨今問題となっている「創薬標的の枯渇」の解消に繋がる。本年度は、抗がん剤標的タンパク質Bcl-xLについて、温度依存性解析や緩和分散解析を行うことで、アポ状態における構造平衡をNMR法により解析した。その結果、抗がん剤ABT-737などのリガンドが結合することで初めて開口すると考えられていたクリプトサイトが、実は非結合状態でも滞在時間としては数%程度ではあるが、開いている状態との交換にあることが明らかとなった。また、リガンド非結合状態における温度依存性解析を行うことで、クリプトサイトの同定と同時に、クリプトサイトと構造的に連動するアロステリックサイトの同定にも成功した。さらに、クリプトサイトの開閉と連動する領域に対して複数の変異を導入し、開口に伴う化学シフト変化を指標に、クリプトサイトを開口状態に安定化するアロステリック変異体F143W変異体(以下FW変異体)を取得することに成功した。FW変異体について、クリプトサイトに結合するペプチドに対する結合を解析したところ、親和性を増大させることが明らかとなった。さらに、FW変異体を用いることで、クリプトサイトに結合するリガンドのスクリーニングを効率化できることが明らかとなり、これを論文にまとめた (Mizukoshi et al, Sci. Adv. (2020))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、化合物と創薬標的タンパク質の運動性を溶液中で評価することで、高活性化合物の創生を加速し、創薬標的の枯渇を解消する「動的構造創薬」の基盤の確立を目指す。今年度はタンパク質側の運動性に着目し、創薬タンパク質の持つ僅かな割合しかない創薬標的都内売る構造に着目し、これを活用する方法を確立し、成果広告を行うことが出来たことから、十分以上の成果が挙がったと考える。また、得られた知見に基づくレビューも発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、化合物側の運動性に着目し、高活性化合物の創生を加速する動的創薬基盤技術の確立を目指して引き続き研究を推進する。
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