研究課題
エポキシ化オメガ3脂肪酸の産生酵素の候補である、Cyp4a12a, Cyp4a12b二重欠損マウス(DKOマウス)の表現型を詳細に解析した。DKOマウスは細胞表面上のFceRIやc-Kitの発現やプロテアーゼなどのマスト細胞マーカーのmRNA発現は野生型と変わらなかったが、IgE/抗原刺激による活性化は野生型に比べて顕著に減弱した。マスト細胞のIgE/抗原刺激による活性化にはSrc family kinaseであるLynやFynの活性化が必須であるが、PAF-AH2欠損マスト細胞では、Srcin1(Src kinasesignaling inhibitor 1)が発現上昇しており、LynやFynの活性化が抑制されていることを明らかにしている。Srcin1の発現はDKOマウスで顕著に発現上昇しており、エポキシ化オメガ3脂肪酸の添加によりその発現上昇は抑制された。さらに、Cyp4a12a, Cyp4a12b二重欠損により即時型アレルギー反応が減弱するか、DKOマウスに受動皮膚アナフィラキシー(PCA)反応を起こしたところ、DKOマウスではPCA反応が顕著に減弱しており、その減弱はエポキシ化オメガ3脂肪酸の投与により回復した。これらの結果から、Cyp4a12a, Cyp4a12bはマスト細胞において、エポキシ化オメガ3脂肪酸の産生をすることによりマスト細胞の活性化に重要な働きをしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Cyp4a12a, Cyp4a12b二重欠損マウスでマスト細胞のIgE/抗原刺激依存的な活性化が減弱すること、それがエポキシ化オメガ3脂肪酸の添加によりレスキューすることが明らかとなり、Cyp4a12a, Cyp4a12bのマスト細胞機能に対する重要性を示すことができた。このことから、研究計画に従っておおむね順調に進展していると判断した。
Cyp4a12a,Cyp4a12bによるエポキシ化リン脂質の産生過程を検討するとともに、エポキシ化オメガ3脂肪酸の作用標的の同定をおこなう。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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