研究課題
炎症疾患の病態は、①病原体への暴露、②血管・免疫系の活性化、③炎症性サイトカイン産生、④血管透過性亢進、のプロセスが順に起こり誘導される。これまでプロセス①-③を抑制する治療薬として、抗生物質、ステロイド、抗サイトカイン(受容体)抗体が開発されてきたが、これらを組合わせてなお治療できない炎症疾患は多く、新しい抗炎症薬の開発が急務となっている。そこで本研究では、これまで治療薬の存在しなかったプロセス④「血管透過性亢進」を抑制する、新機序で作用する炎症疾患治療薬を開発する。具体的には、まず、「血管透過性の抑制を介し、炎症病態を抑制するタンパク質Robo4」を血管内皮細胞に高発現させる戦略で、炎症病態を治療できるかを検証する。さらに、Robo4発現促進分子を創製し、これらが血管透過性抑制効果を有する、新しい炎症治療薬となりうるかを検証する。本研究は、これまで治療薬の存在しなかった「血管透過性亢進」のプロセスを抑制する治療薬を提唱し、難治性の炎症疾患治療への道を開く学術的、社会的意義を有する。本年度は、まずRobo4の制御メカニズムを解析し、Robo4発現がALK-SMAD経路により正と負に調節されることを見出した。この知見に基づき同定したALK1阻害剤は、血管内皮細胞とマウス肺のRobo4発現を促進し、血管透過性を抑制することを明らかにした。さらに、ALK1阻害剤をマウスの炎症性疾患モデル(敗血症、COVID-19)に投与すると、死亡率が低下した。これらの結果から、Robo4発現促進薬で炎症疾患が治療できることが明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
Robo4発現促進薬としてALK1阻害剤を発見し、血管透過性の抑制を介して炎症性疾患・感染症病態を治療できることの実証に成功し、論文報告に至った。
Robo4発現促進活性を持つ分子のさらなる探索と、Robo4の血管透過性抑制メカニズムの詳細な解明を行う。また、Robo4により抑制可能な炎症性疾患の同定を行う。
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