研究課題
リーリンは脳の発達と機能を制御する分泌タンパク質であり、その機能低下が様々な精神神経疾患の増悪化の原因であると考えられている。我々は以前、リーリンがリピート3の中で特異的な分解を受けること、および、この分解がリーリンを不活化することを証明した。この不活化反応を担うADAMTS-3の欠損マウス、および、リーリンの分解部位を変異を導入したノックインマウス(ともにリーリン分解が著減し、リーリンシグナルの総量は増加する)を詳細に解析した結果、リーリンは大脳の樹状突起発達を制御することと、OPCの移動と最終位置を制御することが判った。リーリンが神経細胞に及ぼす影響がどのような分子メカニズムを介しているかを調べた結果、いくつかの脂質分子の代謝に関わる可能性が示唆された。神経細胞膜におけるこの脂質の変化は、多様な膜タンパク質の局在や機能を制御していることが知られており、リーリンの多様な(ときに細胞種に依存した)機能を説明できる可能性がある。リーリン受容体VLDLRの欠損は、平衡障害症候群 (CAMRQ)を引き起こす。ほぼ同じ病態が、リン脂質フリッパーゼの一種ATP8A2の変異でも生じる。この両者が神経回路網形成で同じ経路で機能する可能性を検討するため、ゲノム編集技術を用いてリーリン(ヘテロ欠損)とATP8A2(ホモ欠損)の二重変異マウスを作成した。その結果、ATP8A2単独欠損に比較して、二重変異マウスのほうが悪化することはなかった。現在、さらぶATP8A1の欠損マウス作成し、解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
計画した実験はほぼ予定通り進行している。
リーリンが脂質代謝酵素に与える影響を、特に翻訳後修飾を中心に解析する。複数の遺伝子改変マウスを組み合わせる実験については、全ての遺伝子型を解析することは煩雑になるので、パイロット実験を行った上で解析すべき遺伝子型を絞って解析する。
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