研究課題/領域番号 |
20H03385
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
今井 浩孝 北里大学, 薬学部, 教授 (50255361)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 心不全 / 脂質酸化 / フェロトーシス / GPx4 |
研究実績の概要 |
ビタミンE低下による心臓特異的GPx4KOマウスの心不全を抑制する抗生物質Aを投与した時の腸内細菌叢の変化を次世代シークエンサーにより解析したところ、1種類の腸内細菌属Aに変化していることを明らかにしたが、腸内細菌は単離培養できるとは限らない。本年度は、抗生物質A投与より耐性となり生き残った腸内細菌属Aを単離できるのか、また培養できるのかについて、CPZ投与後の糞液からプレート法を用いて、腸内細菌種の単離、同定をおこなった。さらにゲノム配列を決定したところ、7種類の腸内細菌Aの単離に成功した。さらにMRS培地で培養が可能であること、この通気状態での培養には、ビタミンEは必須ではないこと、ビタミンEにより増殖率に違いがないことも明らかになった。また、ビタミンE食でレスキューした心臓特異的GPx4KOマウスを4剤合剤により一度擬似無菌にしたあと、ビタミンE低下食にかえる際に、ゾンデで腸内細菌属Aを1週間ごとに移植することで、腸内細菌属AがビタミンE低下による心不全を抑制できることを明らかにできた。今後この系を用いて単離腸内細菌種Aを投与し、種間での心不全抑制効果の違いがあるかの検討をおこなう予定である。またCPZ投与および腸内細菌Aの経口投与では、ビタミンE欠乏食にかえた場合では心不全の抑制効果がないこと、ビタミンEのみでは致死の延長効果がみられない濃度の、少量のビタミンEを餌に添加すると腸内細菌Aが心不全を抑制できることを明らかにし、腸内細菌種Aの心不全の抑制にはビタミンE依存性があることが明らかとなった。腸内細菌A自体の増殖にはビタミンEは必要ないことから、腸内への定着、あるいは腸内細菌の心不全抑制物質の産生、ビタミンEの代謝や取り込み量の変化等に腸内細菌Aが関与する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響もあり、4-5月が全く実験ができない状況となり、その分、マウスの交配、ジェノタイプ解析ができなく、腸内細菌の種のスクリーニングについてやや遅れているが来年度で遅れをとりもどし、種の違いについて明らかにしたい。そのほかは概ね計画どおりである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、抗生物質A投与により変化し生き残った腸内細菌属Aの選択培地による7種類の属菌Aの単離とMRS培地を用いた培養方法について明らかにすることができた。また、ビタミンE添加食でレスキューした心臓特異的GPx4KOマウスを4剤合剤により一度擬似無菌にしたあと、ビタミンE欠乏食および欠乏食に少量のビタミンEを添加する条件により、ゾンデで腸内細菌を1週間ごとに移植することで、腸内細菌属Aの投与により心突然死が抑制できるスクリーニング系の構築もできた。本系の構築にて腸内細菌Aが心不全の抑制能を発揮するためには、ビタミンE欠損食ではダメで、少量のビタミンE量が必要であることが明らかとなった。今後は、この擬似無菌マウス系へ、今回単離に成功した腸内細菌種Aの移植により、種の違いにより心不全の抑制効果に違いが見られるのかを明らかにする。違いが見られた場合には、腸内細菌のゲノム配列の違いからそのターゲット遺伝子の探索をおこなう。また、なぜ少量のビタミンEが致死の抑制に必要であるのかについて、APCI法を用いたLCーMS/MS法および重水素標識したビタミンEを用いて、腸内細菌AによりビタミンEの腸からの取り込み量の増加がみられるのか、ビタミンEにより腸内細菌の定着率が変わるのか、ビタミンEの腸内でのトランスポーター候補であるNPC1L1の発現量の変化とその阻害剤エゼチミブ投与により、腸内細菌Aによる心不全の抑制効果がキャンセルされるのかについて明らかにする。さらに腸内細菌が産生する致死抑制物質を網羅的なメタボローム解析にて同定をこころみる。また、抗生物質A以外の抗生剤による心不全の抑制効果がみられるか、ビタミンE要求性があるか、腸内細菌属A以外が関与する抗生物質が存在するのかについて明らかにする。
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