心臓特異的GPx4欠損マウスは、発生過程17.5dpcで心筋細胞死を起こし突然死となるが、ビタミンE添加食を与えると正常に生育できる。またこのマウスの離乳時に通常食、あるいはビタミンE欠乏食に変えると約20日で心筋に脂質酸化が亢進し、心筋突然死をおこす。本年度、我々はGPx4欠損によるゆっくりとしたMEF細胞死がフェロトーシスとも異なる鉄非依存性の脂質酸化を介したリポキシトーシスであることを報告し、リポキシトーシス特異的阻害剤も見出した。上記、心臓特異的GPx4欠損マウス心筋初代培養系を作成し、ビタミンE低下におけるGPx4欠損心筋細胞死がリポキシトーシスかどうかを検討したところ、リポキシトーシス阻害剤で抑制されたため、リポキシトーシスであることを明らかにした。またビタミンE添加食から欠損食に変えた時の心突然死は抗生物質CPZの投与により抑制できること、CPZ耐性の腸内細菌属Aが腸内に定着し、心不全を抑制できることを見出している。本年度、この腸内細菌属Aの単離培養に成功し、7種類のA菌を単離した。さらに抗生物質4剤合剤による前処理により、一度心臓特異的GPx4欠損マウスを擬似無菌マウス状態にしたのち、CPZ投与した別マウスの糞便(CPZ耐性の腸内細菌属A)を移植したところ、寿命を延ばすことができることが明らかとなった。また単離した腸内細菌属Aを、擬似無菌マウスにゾンデで投与すると腸内に腸内細菌属Aが定着できたマウスは寿命が伸びることを明らかにした。このことから、腸内細菌属Aには心臓の脂質酸化を抑制できる何らかの機構が存在すること、ビタミンE欠乏食では寿命がのびないことから、腸内での少量のビタミンEが致死の抑制には必要であることを明らかにした。
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