研究課題
トリプルネガティブ(TNBC)型乳がんに属するbasal-like型乳がんは、TNBCの中でも特に再発率が高く、予後の悪いがんとして知られている。このタイプの乳がんではコンドロイチン硫酸(CS)の硫酸基転移酵素のうち、C4ST-1及びGalNAc4S-6STを高発現するものが比較的多い。これらの硫酸基転移酵素はGalNAcの4位と6位が硫酸化されたEユニットと呼ばれる二糖単位の合成に関わる。Eユニットの含量が高いCS(CS-E)は2種のbasal-like型乳がん細胞株、BT-549及びMDA-MB-231細胞の浸潤能を上昇させる活性をもつ。BT-549細胞ではN-カドヘリンがCS-E受容体として働く。MDA-MB-231細胞ではWnt5aの受容体として知られるROR1が高発現する。Eユニットを含むCSがROR1によって認識されるかどうかを調べたところ、WNT5Aの存在下でCSがROR1に結合することがわかった。また、Eユニットの合成に関わるGalNAc4S-6STの発現を抑制するとJNKの活性が低下し乳がん細胞の浸潤能や運動能が抑制された。骨組織の恒常性は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスによって維持されている。FAM20Cは、CSに代表される硫酸化糖鎖の橋渡し糖鎖構造中のキシロースをリン酸化するキシロースキナーゼ活性と、C4ST-1と結合しその4-硫酸化活性を高める新たな機能を持ち合わせていた。Raine症候群患者にみられる変異型FAM20Cは、キシロースキナーゼとしての機能を保持していたが、C4ST-1と結合できなかった。CSの硫酸化は、4-硫酸化と6-硫酸化の割合を示す4S/6S比で評価するが、変異型FAM20Cを導入したヒトの骨芽細胞株では、4S/6S比の顕著な低下が観察され、骨硬化につながるバイオミネラル形成が亢進することが判明した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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