近年、不安障害の患者数は急増しており、認知症患者数よりも多く、社会負担が甚大ながら、成因・病態機構や治療機序が未解明で新規治療薬の開発も長年失敗している。本研究では、それを打開するため、応募者らが最近開発した方法論を駆使し、従来研究では見逃されていた病態の詳細な分子・神経基盤の解明を通じ、新たな治療法の確立に貢献する。具体的には、最新の高精細全脳イメージング法および単一細胞トランスクリプトーム解析法を組み合わせ、強い精神的ストレスに暴露された脳を、全脳細胞レベルで解析し、ストレス誘発不安様行動を制御する神経基盤を明らかにすることを目指している。本年度は、ストレスに応答する細胞を特異的に蛍光標識し、脳全体の回路構造を明らかにするとともに、特に重要な細胞集団のシングル細胞トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、これまでのストレス応答に関わる神経回路に加え、新たな神経回路を同定することに成功した。またその細胞のトランスクリプトーム解析から特に重要な複数の候補分子を同定している。今後は、これらの回路、分子に活動を様々な不安障害や不安惹起法を組み合わせ、新たなコンセプトの不安障害治療法の提唱に繋げることを目指す。
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