研究課題
よく知られた一般的な DNA の形態は、「 B 型 DNA 構造」と呼ばれる右巻き 2 重らせん構造体である。一方、DNA はそれ以外にも様々な立体配座「非 B 型 DNA 構造」を取り得ることが明らかになっている。さらに、RNA に関しても A 型 2 本鎖 RNA を形成するステムループだけでなく様々な RN A構造体が同定されており、生命現象に深く関与する。近年、非 B 型 DNA・RNA 構造のひとつであるグアニン四重鎖(G-quadruplex:G4)構造の生物学的機能が注目されている。グアニン四重鎖はグアニンが豊富な配列領域で DNA・RNA が形成する特殊な核酸高次構造のひとつであることが知られている。研究代表者は、脳機能における学習・記憶に G4 構造が関与することを報告した(Shioda et al., Nat. Med. 2018)。本研究では G4 構造の学習・記憶における役割を明らかにするため、G4 構造と神経可塑性との関与を解析し、G4 構造による 「DNA 可塑性」の存在を証明する。さらに、申請者が見出した G4 構造作用薬の薬理学的検討を行う。つまり、G4 構造 が脳機能における学習・記憶の分子実態のひとつであることを生物学的・及び薬理学的に明らかにする。認知症に対する有効な脳機能改善薬の開発が求められているが、学習・記憶の分子レベルにおける実態は未だ明らかにされていない。この成果は、「G4 構造」を認知症などの脳機能異常疾患におけるアンメット・メディカル・ニーズ治療薬の新たな標的として社会に提示できる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、長期増強 LTPなどの刺激における G4DNA の可塑性研究の基盤となるG4 ChIP-seq法の確立を行った。通常のChIP-seq法を改良し工夫することで、マウス培養神経細胞を用いた実験でゲノム上のGリッチ領域におけるピークを同定することに成功した。さらに、それらはヘテロクロマチン領域に多く見られた。
今後、より記憶に近い刺激である LTP 刺激を脳海馬スライスで行い、G4 ChIP-seq による G4 形成ピークと RNA シーケンスによる転写発現レベルとの相関を検討する。これらの実験により、記憶形成刺激により DNA に可塑性が生じることを証明できるだけでなく、 DNA 可塑性に関連する遺伝子群が同定できる。
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