研究実績の概要 |
よく知られた一般的な DNA の形態は、「 B 型 DNA 構造」と呼ばれる右巻き 2 重らせん構造体である。一方、DNA はそれ以外にも様々な立体配座「非 B 型 DNA 構造」を取り得ることが明らかになっている。さらに、RNA に関しても A 型 2 本鎖 RNA を形成するステムループだけでなく様々な RN A構造体が同定され ており、生命現象に深く関与する。近年、非 B 型 DNA・RNA 構造のひとつであるグアニン四重鎖(G-quadruplex:G4)構造の生物学的機能が注目されている。グ アニン四重鎖はグアニンが豊富な配列領域で DNA・RNA が形成する特殊な核酸高次構造のひとつであることが知られている。研究代表者は、脳機能における学 習・記憶に G4 構造が関与することを報告した(Shioda et al., Nat. Med. 2018; Shioda et al., Sci. Adv. 2021)。本研究では G4 構造の学習・記憶における役割を明らかにするため、G4 構造 と神経可塑性との関与を解析し、G4 構造による 「DNA 可塑性」の存在を証明する。さらに、申請者が見出した G4 構造作用薬の薬理学的検討を行う。つまり、 G4 構造 が脳機能における学習・記憶の分子実態のひとつであることを生物学的・及び薬理学的に明らかにする。認知症に対する有効な脳機能改善薬の開発が求 められているが、学習・記憶の分子レベルにおける実態は未だ明らかにされていない。この成果は、「G4 構造」を認知症などの脳機能異常疾患におけるアンメッ ト・メディカル・ニーズ治療薬の新たな標的として社会に提示できる。
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