研究課題/領域番号 |
20H03394
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石橋 正己 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (90212927)
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研究分担者 |
高屋 明子 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (80334217)
原 康雅 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (10824625)
荒井 緑 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40373261)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生理活性 / シグナル伝達 / 生体分子 / 有機化学 / 薬学 |
研究実績の概要 |
本研究では,「がん不均一性の克服」に寄与する低分子化合物を天然物から探索することを目的として,幹細胞の自己複製に関わるWnt,およびがん選択的にアポトーシスを誘導するTRAIL,およびエピジェネティック遺伝子転写を制御するポリコーム構成分子の一つであるBMI1のプロモーター阻害作用等に関するスクリーニングを行った. 1)TRAIL耐性胃がん細胞AGSを用いたスクリーニングにより,ミカン科植物Murraya paniculataおよびマメ科植物Acacia mangiumを選別し,前者から10種のクマリン型天然物を,後者からは新規炭素骨格をもつC20テルペノイド化合物acacienoneを単離した.クマリン類にはTRAIL耐性克服作用は認められなかったが,側鎖にエポキシ環を含むクマリン類はWntシグナル阻害作用を示すことが分かった.またacacienoneは,テルペン骨格の4位から3位へメチル基が転位し,さらに13位メチル基が脱離した稀少な炭素骨格をもつ天然物であり,X線結晶解析により化学構造を確定した. 2)Wntシグナル阻害作用に関する細胞アッセイシステムを用いたスクリーニングを行い,センダン科植物Aglaia odorataおよびAmoora cucullataを選別し,両者よりロカグラミド型天然物6種を単離した.そのうちピロリジン環および桂皮酸ユニットを含むジアミド天然物odorineは,ウェスタンブロットの結果,Wntシグナルの転写活性化因子であるβ-cateninおよび標的の一つであるc-Mycのタンパク質発現量を減少させ,定量PCRによりc-MycのmRNAの発現を低下させることがわかった. 3)BMI1に関するスクリーニングにより,キツネノマゴ科植物Andrographis paniculataよりBMI1プロモーター阻害活性を示す一連のジテルペン類を単離した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wnt,TRAIL,およびBMI1シグナル等に対するスクリーニングを継続して行い,数種の活性化合物を単離した.継続して行っているスクリーニングの結果,さらに複数のヒットサンプル(植物エキスおよび放線菌培養エキス)を見出した.これらからさらに未知の活性天然物が単離されることが期待される.一方,これまでに得られた活性成分に対して,強力な作用を示すものなど,興味深い天然物に対しては,ウェスタンブロットや定量PCR法を用いた作用機構の解析を行い,シグナル経路を構成するタンパク質やmRNAの増減等に関する知見が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
Wnt,TRAIL,およびBMI1シグナル等に対するスクリーニングをさらに継続して行っていく.一方で,これまでにも,植物エキスおよび放線菌培養エキスから興味深い活性を示すヒットサンプルがすでに見つかっているので,活性成分の探索をさらに詳細にすすめていく.また,これまでに単離した天然物の中で,興味深い作用を示した活性成分を数種選別し,それらについての作用メカニズムを分子レベルで解析する実験をさらに進展させ,活性化合物の作用点や標的分子を解明するための実験方法を検討し実施する.
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