研究課題/領域番号 |
20H03399
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 康雄 東北大学, 薬学研究科, 講師 (70583590)
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研究分担者 |
三枝 大輔 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (90545237)
水野 忠快 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (90736050)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バリアーシステム生物学 / 中枢関門(原因)仮説 / 中枢関門創薬 / SWATH / OLSA |
研究実績の概要 |
2020年度は、病態時の血液脳関門の分子機構を独自のOmics技術によって定量的に解明した。具体的には、中枢疾患の脳組織から脳血管を単離し、LC-MS/MSを用いたSWATHプロテオミクスによって、病態時の血液脳関門の分子機構を定量的に解析した。てんかん患者の脳毛細血管では、密着結合の崩壊に伴って、血液中成分の脳内への浸潤が認められた。酸化ストレスパスウェイの分子群もてんかんに伴って変動が認められた。密着結合の崩壊度合いが、けいれん発作に影響することがげっ歯類で報告されていることから、てんかん患者においても血液脳関門の異常がてんかんの悪化を招いている可能性がある。てんかんに加えて、多発性硬化症についても解析をすすめた。多発性硬化症は、血液脳関門の崩壊が原因となって、自己反応性リンパ球が脳内へ浸潤し、傷害を起こす疾患であるが、これまでClaudin-5が密着結合崩壊に重要だと考えられてきた。我々の解析の結果、Claudin-5ではなく、Claudin-11が有意に発現低下していることが示された。Claudin-11は、男性ホルモンで発現・機能が誘導されることから、多発性硬化症が女性で起こりやすい原因がClaudin-11によって説明できると考えられる。また、アルツハイマー病患者の剖検脳組織から、従来よりも高純度で脳毛細血管を単離することに成功し、その血液脳関門についてもSWATH解析を行ったところ、グルコーストランスポーター(GLUT1など)やアミノ酸トランスポーター(LAT1・4F2hc)のタンパク質レベルでの発現上昇を定量的に明らかにできた。これらの研究から、中枢疾患を治療する上での治療標的を絞り込む戦略を確立できるとともに、有望な標的を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していた解析が完了し、予定前倒しで翌年度の計画に着手できたため。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト中枢関門における分子機構プロファイルを解明するとともに、化合物が中枢関門の分子機構に与える影響を解析する。
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