研究課題
本研究は、3年間で、次の4段階で目的を達成する構想である:[1] 病態時の血液脳関門の分子機構を独自のOmics技術によって定量的に解明する。[2] ヒト血液脳関門モデル細胞株へ化合物を処理し、変動する分子機構を調べる。[3] 複数の化合物に関するこのデータから、独自の薬物選択アルゴリズムを用いて、病態分子機構を元に戻す作用を持つ化合物を選定する。[4] 疾患モデル系へ処理し、治療の有効性を証明する。2021年度は、これらすべての項目を達成し、関門機能をシステマティックに研究する学問「バリアーシステム生物学」の基盤を構築できたと考えている。具体的には、多発性硬化症の脳血管において、Annexin A2を中心とする分子機構が、関門崩壊やリンパ球の脳浸潤の促進の原因となる分子機構であることを証明した。Annexin A2を標的とする物質を投与することによって、確かに、多発性硬化症が治療されることを示した。Annexin A2は、内皮細胞選択的に発現する分子であるため、脳血管を標的とすることが中枢疾患の治療において重要であることを示した(論文発表済)。スタンフォード大学との共同研究によって、ヒトのてんかん病態においても、血管における分子機構を解明した(論文発表済)。選択的に発現する分子の遺伝子欠損マウスにおいて、てんかん発作が誘発されることが示され、血管内皮の分子が脳内のてんかん発作を制御することが示された。さらに、東京大学の水野先生との共同研究によって、SWATH法とOLSA法の融合によって、網羅的かつ高精度に、化合物の薬理作用を探索する方法論を構築することができ、論文投稿を予定している。血液脳関門は、脳内の恒常性を制御するため、その病態分子機構の同定とそれに続く標的化治療は中枢疾患治療に有効であることが実証された。Omics解析の結果、多数の治療標的候補が同定されていることから、今後、脳関門は有望な治療標的になると期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
予定していた解析が完了し、予定前倒しで翌年度の計画に着手できたため。
アルツハイマー病などの他の中枢疾患についても検証し、本戦略の有用性を強化する。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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