研究課題/領域番号 |
20H03402
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
前田 和哉 北里大学, 薬学部, 教授 (00345258)
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研究分担者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 消化管吸収 / crypt / ヒト新鮮消化管 / 経細胞輸送 / 代謝酵素 / トランスポーター / 消化管吸収予測 |
研究実績の概要 |
本研究では、本来廃棄される手術残余ヒト消化管検体を創薬に有効活用すべく、医薬品の消化管吸収の予測を目指すものである。本年度は、昨年度に開発した消化管検体そのものを用いた透過性試験の弱点である実験に耐えうる検体の質の維持が困難であるポイントを克服すべく、新たに消化管検体よりcrypt領域を単離し、消化管幹細胞をゲル内3D培養することで継代・拡大培養可能な実験系を構築し、さらに培地組成の変化のみで分化吸収上皮細胞の2D培養系(通常の培養皿/transwell)に展開する方法論を確立した。さらに消化管吸収の種差・部位差の検討を進めるべく、マウス、イヌ、サルについても消化管上部から下部に至るまで複数部位での細胞株の樹立を実施した。それらを用いて、消化管吸収の予測を試みたところ、各細胞において、分化条件にしてから約1週間程度で消化管に存在する各種代謝酵素や取り込み・排出トランスポーターがヒト消化管検体レベルに匹敵する発現を示し、代謝・輸送機能が確認された。これは、従来消化管吸収評価のためのin vitro実験系として大腸がん由来Caco-2細胞が有していない機能も本実験系が有していることが確認された。さらには、CYP3Aによる代謝を受ける複数の薬物に関して、ヒト消化管代謝回避率(Fg)をin vitro実験系におけるapicalからbasal方向への輸送活性を基に予測を試みたところ、良好な予測を行うことができた。このことより本研究で構築した実験系が、ヒト消化管吸収の予測に用いうる可能性を示唆する基礎データをとることができた。 また、動物検体で、消化管上部と下部に偏在する代謝酵素・トランスポーターが、それぞれの部位から採取したcrypt由来の分化細胞において発現の多寡が保持されていることが確認され、消化管の吸収部位差を初めてin vitroで検証可能な実験系となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、crypt由来消化管幹細胞の培養系の確立、拡大培養の系について、ヒト以外にも複数の動物の消化管各部位で樹立に成功し、分化細胞の代謝・輸送の一通りの機能が維持されていること、消化管吸収率の定量的予測がCYP3A基質では可能であることを立証できたことから、概ね計画通りの進捗であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに複数の代謝酵素・トランスポーターの基質となり、複数の分子によって複雑に消化管吸収の制御を受ける薬物の消化管吸収率の予測方法を確立すると共に、遺伝子ノックダウン・ノックイン株の構築手法を確立し、個々の分子の消化管吸収における重要性を明らかにできる手法を確立する研究を進める。また、ヒト消化管下部についても検体を供与いただき、ヒトにおいても消化管の吸収部位差についての検証を実施する。
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