研究課題/領域番号 |
20H03403
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
細谷 健一 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70301033)
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研究分担者 |
田渕 圭章 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20322109)
久保 義行 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (20377427)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血液網膜関門 / MCT / モノカルボン酸トランスポーター / カチオン性薬物 / 網膜毛細血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的であるモノカルボン酸輸送体 (MCT) 9および14の血液網膜関門 (BRB) におけるカチオン性薬物輸送分子実体であることの実証に向け、MCTファミリーの組織細胞での発現ノックダウン系構築を実施した。BRBの中で網膜毛細血管内皮細胞を実体とするinner BRBのモデル細胞、TR-iBRB細胞に対しMCT14を標的としたRNA干渉を実施したところ、本分子の発現低下が示された。MCT14と同様にMCTファミリーに属するMCT12について、RNA干渉の実験系構築に成功しており、このMCT12について新規輸送基質としてグアニジノ酢酸を見出し、このMCT12介在グアニジノ酢酸輸送について生体における重要性の一部を明らかにし、Biochim. Biophys. Acta Biomembr.にその成果の一部を発表した。それに加え、MCT12については、2021年度に実施を計画しているゲノム編集技術を駆使した遺伝子ノックアウト細胞株を構築するためのコンストラクト構築を行い、セレクション培養を通じて、導入細胞株候補の単離を行っている。以上から、これらMCTノックダウン・ノックアウト細胞を駆使し、MCT発現低下によって輸送能が変化するカチオン性薬物を選別する準備が整ったと言える。
遺伝子ノックダウンBRB細胞株の作出に加え、MCT9とMCT14についてアフリカツメガエル卵母細胞 (oocyte) 発現系の構築に成功し、MCT9過剰発現oocytesにおいて非発現oocytesと比して輸送が増大する新たなカチオン性薬物を見出した。このカチオン性薬物は神経保護作用を有するため、今後、この薬物についてBRBを介した網膜への分布にMCT9が重要な役割を果たすか精査を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MCT過剰発現細胞を用いた検討から、網膜神経保護作用を示す、あるカチオン性薬物の網膜分布にMCT9が関与することを見出した。さらに、2021年度に実施する予定であったゲノム編集株の構築について、MCT12を対象とした条件検討を進め、ゲノム編集条件の最適化も見通しが立てられた。 2021年度は2020年度にて得られた成果を基にMCT9とMCT14を標的としたゲノム編集による遺伝子ノックアウトBRB細胞株を構築し、oocyte発現系にて見出された新規輸送基質となるカチオン性薬物の網膜へのBRBを介した分布に対するこれら分子の役割を決定付ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、MCT9とMCT14のBRBモデル細胞株における発現ノックダウン条件と、発現欠失に関する条件検討は完了している。まず、同定されたカチオン性薬物についてBRBを介した網膜への分布へのMCT9・MCT14の関与を明らかにするため、これら開発された材料を用いた輸送解析を行う。また、2020年度に同定された薬物は神経保護作用を有するものであったことから、MCT9およびMCT14がこの薬物の構造類似体を認識するかをoocyte発現系を用いて解析し、BRBに発現するこれら分子がカチオン性網膜神経保護薬物の網膜への分布ルートとなり得るかを検証する予定である。
これらに加え、生体レベルにおける重要性の実証に向けて、in vitroコンストラクトを基に全身性MCT9・14欠失ラット作出に取り組んでいく計画である。なお、現在in vitroのコンストラクトはフレームシフト誘発を目的としているが、必要に応じ、様々な変異パターン導入を試みる予定である。
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