研究課題/領域番号 |
20H03409
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
深田 俊幸 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70373363)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 亜鉛シグナル / 骨格筋 / 皮膚 / 創薬 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
骨格筋の形成におけるZIP13の役割:骨格筋特異的Zip13-KOマウスを用いてインスリン抵抗性を解析した結果、本マウスにインスリン応答の顕著な低下を確認した。本マウスの活動量と酸素消費量を解析した結果、それらの低下を確認した。さらに、EDSSPD3患者由来iPS細胞株から分化させた骨格筋細胞において、糖取り込み能の低下を確認した。すなわち、ZIP13が骨格筋の糖代謝に関与することが示唆された。加えて、Zip13-GFP/Tomato-KIマウスを用いて骨格筋を解析した結果、筋サテライト細胞がZIP13を発現すること、休止期の筋サテライト細胞にZIP13の発現が高まることを見出した。
骨格筋の喪失におけるZIP14の役割:Zip14-GFP-KIマウスを作成し、炎症時におけるGFPの発現状況をFACS等で解析した。さらに、薬剤誘導性ZIP14発現細胞と薬剤誘導性ZIP8発現細胞を適用して、ZIP14に依存した亜鉛の過剰導入による細胞増殖障害作用を指標にしたZIP14阻害剤のスクリーニングを実施した。
表皮と毛包の形成におけるZIP10の役割:Zip10-GFP-KIマウスとTd-Tomato-KIマウスを交配して作成したZip10-GFP/Tomato-KIマウスにタモキシフェンを投与し、皮膚組織におけるGFPとTomatoの発現を免疫染色法で解析した。その結果、ZIP10の発現が認められた毛包外根鞘とは異なる部位に、Tomatoの発現を認めた。さらに、皮膚組織の初代培養細胞にタモキシフェンを投与し、Tomatoを発現する細胞群の存在を確認した。すなわち、タモキシフェンの投与によって、ZIP10発現細胞の子孫細胞が可視化できること、それらが毛包外根鞘とは異なる部位に存在ことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍で研究活動の実践が危ぶまれたが、多くの新しい知見を得ることができた。具体的には、骨格筋特異的Zip13-KOマウスの多様な表現系が確認されたこと、ZIP10発現細胞の子孫細胞の観察がin vivoとin vitroで可能になったこと、ZIP14の機能解析におけるZip14-GFP-KIマウスの有用性が確認できたことが成果として挙げられる。特に、作成した遺伝子改変マウスは、今後の研究展開に大きく貢献すると考えている。さらに、創薬候補化合物のスクリーニングには大きな期待を抱いている。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋の形成におけるZIP13の役割:骨格筋特異的Zip13-KOマウス由来の骨格筋細胞を用いて遺伝子発現の変化を解析し、ZIP13の影響を受けるシグナル経路を同定して、筋機能におけるそれらの役割を解明する。さらに、骨格筋形成におけるZIP13発現細胞の役割を明らかにするために、Zip13-GFP/Tomato-KIマウス由来の筋サテライト細胞を単離し、single cell analysisによってZIP13発現筋サテライト細胞の特徴を解析する。
骨格筋の喪失におけるZIP14の役割: Zip14-GFP/Tomato-KIマウスを用いてがん悪液質モデル実験を実施し、骨格筋の萎縮過程におけるZIP14発現細胞の役割を解明する。さらに、本マウスの骨格筋からZIP14発現細胞を単離し、single cell analysisによってZIP14発現細胞の特徴を解析する。加えて、薬剤誘導性ZIP14発現細胞と薬剤誘導性ZIP8発現細胞を適用したZIP14特異的な阻害剤のスクリーニングと候補化合物の解析を引き続き実施する。
表皮と毛包の形成におけるZIP10の役割:Zip10-GFP/Tomato-KIマウスの表皮と毛包からGFPとTomatoを指標にしてZIP10発現細胞をソーティングし、single cell analysisによってZIP10発現細胞の特徴を解析する。さらに、皮膚初代培養細胞にタモキシフェンを投与して確認されたTomatoを発現する細胞群について、上記の同様にsingle cell analysisによる特徴の解析を実施する。
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