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2020 年度 実績報告書

発達期からの慢性ニコチン曝露がもたらす神経回路変容の統合的理解

研究課題

研究課題/領域番号 20H03410
研究機関北海道大学

研究代表者

山崎 美和子  北海道大学, 医学研究院, 准教授 (10431305)

研究分担者 宮崎 太輔  北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (90374230)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードアセチルコリン / ニコチン / 神経伝達
研究実績の概要

ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、タバコの主成分であるニコチンと結合することにより様々な神経伝達修飾作用を及ぼす。よく知られたニコチン依存に加え、近年では発達期からのニコチン曝露がオピオイド系を始めとする薬物依存への道筋をつけるという新たな可能性が示唆されているが、その生物学的なメカニズムや脳内でnAChRの局在やその分子機構にも未だ不明な点が多い。本研究ではnAChRを介した神経伝達修飾の解剖学的な基盤を示し、発達期からのニコチン曝露が神経回路にどのような構造的・機能的な変容をもたらすかを明らかにする。今年度は以下の二項目で進捗があった。
1)a7サブユニットに対する特異抗体の開発:脳内の主要サブユニットであるa7サブユニットに関し、生化学解析に使用できる抗体は既に開発していたが、今年度、脳組織での免疫染色に使用可能な特異抗体の開発に成功した。野生型マウスでは、陽性シグナルが大脳皮質第1層や海馬の上昇層の抑制性介在ニューロンや、赤核、二丘体傍核に存在していた。これに対し、a7欠損マウスではシグナルが検出されず、特異性が確認された。また、a7サブユニットのアセンブリに必要なシャペロンTMEM35欠損マウスでもシグナルが検出されなかった。このことはa7の細胞膜への輸送ではなく、アセンブリにTMEM35Aが必須であることを示唆している。また、組織染色に有用というだけでなく、生化学解析での感度・特異度ともに高く今後の解析に非常に有用なツールとして期待できる。

2) b4サブニットに対する特異抗体の開発:b4サブニットに対する特異抗体の開発に成功した。内側手綱核-脚間核投射系に選択的に局在していることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度に、今後の解析に有用な複数のツールの開発に成功し、鍵となるデータを得ることができた。

今後の研究の推進方策

1)a7サブユニットの脳内における発現部位の解析
脳内の主要サブユニットであるa7サブユニットに対する特異抗体を用いて発現解析を行う。この際、陽性細胞の神経化学特性や、神経細胞内のどのコンパートメント(細胞体、樹状突起、軸索、神経終末)にいるかが重要な情報となるので、AAVによりGFPを導入する順行性標識と各マーカー分子との多重染色を組み合わせて共焦点レーザー顕微鏡により局在を検討する。
2)その他のサブユニットに対する特異抗体の開発
脳内のnAChRの発現様式の理解を目指し、ユニークなアミノ酸配列を抗原として用いてポリクローナル抗体作成を行う。今年度はa3, a4, a5, a6, b2, b3受容体の抗体作成に着手する。特異性についてはサブユニット欠損マウスサンプルを用いて検討する。開発が成功しないサブユニットについては選択性の高いリボプローブを用いたin situ ハイブリダイゼーションによる細胞発現検討に留まる可能性がある。
3)a7*-nAChR複合体の構成分子・結合分子の同定
特異抗体を使った共免疫沈降により精製する。このサンプルを、非変性状態で複合体構造をとるタンパク質や膜タンパク質複合体の大きさや分子種を調べるために有用な手法であるBlue Native-PAGEによる泳動を行い、切り出したバンドの質量分析により構成サブユニットと受容体結合分子の同定に取り組む。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] Yale大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Yale大学
  • [雑誌論文] Kv11 (ether-a-go-go-related gene) voltage-dependent K + channels promote resonance and oscillation of subthreshold membrane potentials2021

    • 著者名/発表者名
      Matsuoka T, Yamasaki M, Abe M, Matsuda Y, Morino H, Kawakami H, Sakimura K, Watanabe M, Hashimoto K.
    • 雑誌名

      J Physiol .

      巻: 599 ページ: 547-69

    • DOI

      10.1113/JP280342.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nectin-2α is localized at cholinergic neuron dendrites and regulates synapse formation in the medial habenula2021

    • 著者名/発表者名
      Shiotani H, Miyata M, Kameyama T, Mandai K, Yamasaki M, Watanabe M, Mizutani K, Takai Y.
    • 雑誌名

      J Comp Neurol .

      巻: 529 ページ: 450-77

    • DOI

      10.1002/cne.24958.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TMEM163 Regulates ATP-Gated P2X Receptor and Behavior.2020

    • 著者名/発表者名
      Salm EJ, Dunn PJ, Shan L, Yamasaki M, Malewicz NM, Miyazaki T, Park J, Sumioka A, Hamer RRL, He WW, Morimoto-Tomita M, LaMotte RH, Tomita S.
    • 雑誌名

      Cell Rep.

      巻: 31 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2020.107704.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Compartmentalized Input-Output Organization of Lugaro Cells in the Cerebellar Cortex2020

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki T, Yamasaki M, Tanaka KF, Watanabe M.
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: S0306-4522 ページ: 30322-5

    • DOI

      10.1016/j.neuroscience.2020.05.026.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression mapping, quantification, and complex formation of GluD1 and GluD2 glutamate receptors in adult mouse brain2020

    • 著者名/発表者名
      Nakamoto C, Konno K, Miyazaki T, Nakatsukasa E, Natsume R, Abe M, Kawamura M, Fukazawa Y, Shigemoto R, Yamasaki M, Sakimura K, Watanabe M.
    • 雑誌名

      J Comp Neurol .

      巻: 528 ページ: 1003-27

    • DOI

      10.1002/cne.24792.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Development of an L-type Ca 2+ channel-dependent Ca 2+ transient during the radial migration of cortical excitatory neurons2020

    • 著者名/発表者名
      Horigane SI, Hamada S, Kamijo S, Yamada H, Yamasaki M, Watanabe M, Bito H, Ohtsuka T, Takemoto-Kimura S.
    • 雑誌名

      Neurosci Res

      巻: S0168-0102 ページ: 30391-6

    • DOI

      10.1016/j.neures.2020.06.003.

    • 査読あり
  • [学会発表] ニコチン性アセチルコリン受容体の分子シャペロンTMEM35Aは成体マウス脳内において細胞選択的に発 現している2021

    • 著者名/発表者名
      山崎美和子、大坪琴美、今野幸太郎、渡辺雅彦
    • 学会等名
      第126回日本解剖学会総会・全国学術集会 / 第98回日本生理学会大会 合同大会
  • [学会発表] ニコチン性アセチルコリン受容体の分子シャペロンTMEM35(NACHO)の成体マウス脳における発現解析2020

    • 著者名/発表者名
      山崎美和子、大坪琴美、今野幸太郎、渡辺雅彦
    • 学会等名
      第43回日本生物学会年会
  • [学会発表] 神経型ニコチン性アセチルコリン受容体の分子シャペロンTMEM35A(NACHO)の成体マウス脳における発現2020

    • 著者名/発表者名
      山崎美和子、大坪琴美、今野幸太郎、渡辺雅彦
    • 学会等名
      第93回日本生化学会大会

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公開日: 2022-12-28  

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