研究課題
ニコチン性アセチルコリン受容体は、タバコの主成分であるニコチンと結合することにより様々な神経伝達修飾作用を及ぼす。よく知られたニコチン依存に加え、近年では発達期からのニコチン曝露がオピオイド系を始めとする薬 物依存への道筋をつけるという新たな可能性が示唆されているが、その生物学的なメカニズムや脳内での局在やその分子機構にも未だ不明な点が多い。本研究ではニコチン性アセチルコリン受容体を介した神経伝達修飾の解剖学的な基盤を示し、発達期からのニコチン曝露が神経回路にどのような構造的・機能的な変容をもたらすかを明らかにする。これまでに、解析に必要な特異抗体やプローブ開発に成功した。中でもニコチン摂取量の上限を規定すると考えられているa3b4受容体に対する抗体開発に成功し、、これらの抗体を用いた免疫染色により、野生型マウスの内側手綱核―脚間核経路に選択的に局在していることを明らかにすることができた。この免疫反応はb4欠損マウスで消失しており、特異的シグナルの検出に成功したと判断された。このa3b4受容体の発現は、他のニコチン性受容体の発現に必須であるシャペロン分子TMEM35Aの欠損マウスでも変化が認められなかった。したがってa3b4受容体は、他の多くのニコチン性受容体とは別系統の発現制御機構を必要とする可能性が示唆された。また、免疫電顕によりa3b4受容体の詳細な細胞内分布についても解析を進めることができた。特に内側手綱核では投射ニューロンの樹状突起のシナプス外の細胞膜、脚間核では、内側手綱核からの投射神経終末のシナプス外の細胞膜に豊富に存在していることが明らかとなった。内在性のa3受容体の局在は世界で初めての報告となるため、今後は連続電顕を用いた3D再構築データを加えて論文として発表する予定である。
2: おおむね順調に進展している
これまで不明であった内在性受容体の複合体や詳細な分布様式を解明するためのツール開発に成功した。また、そのツールを使用して内在性受容体の細胞内分布に関しては、微細構造との関連も含めて解析を進めることができている。
今後は開発したツールを用いて、内在性受容体の詳細な分布様式と生化学解析を進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (2件)
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