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2020 年度 実績報告書

負荷で顕在化するホルモン分泌不全の謎:グラニン蛋白欠損マウスから生活習慣病に迫る

研究課題

研究課題/領域番号 20H03411
研究機関旭川医科大学

研究代表者

渡部 剛  旭川医科大学, 医学部, 教授 (80220903)

研究分担者 甲賀 大輔  旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30467071)
穂坂 正博  秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (80311603)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードグラニン蛋白 / 分泌顆粒 / ホルモン分泌調節 / プロセシング / 膵島β細胞 / 下垂体前葉 / ストレス応答 / 生活習慣病
研究実績の概要

内分泌細胞の分泌顆粒へのペプチドホルモンの選択的な輸送・蓄積過程には、グラニン蛋白と総称される一群の可溶性酸性蛋白の関与が示唆されてきたが、複数のグラニン蛋白の存在による機能的冗長性のために、その生理的意義については未だ不明な点が多い。そこで、本研究課題では、このグラニン蛋白の生理的意義の解明を目指して、2系統の代表的なグラニン蛋白セクレトグラニンII (Sg2)およびセクレトグラニンIII (Sg3)の遺伝子欠損マウス (KOマウス) を作成し、高脂肪/高糖質食での飼育や薬剤投与でホルモン分泌需要を増大させた場合に顕在化する内分泌学的不全症状を解析している。
研究計画初年度に当たる2020年度にはまず、2019年度に研究分担者の穂坂正博が科研費・新学術領域「学術研究支援基盤形成・先端モデル動物支援プラットフォーム」の支援を受けて入手したSg2遺伝子欠損ファウンダーマウスを元に交配・繁殖・遺伝子型解析を進め、これまで報告がなかったSg2-KOマウスの系統を新規に確立した。得られた雌雄のSg2遺伝子ヘテロ接合体マウスの交配では、ホモ接合体(Sg2-/Sg2-)、ヘテロ接合体(-/+)、野生型(+/+)の新生仔がメンデルの法則に従ってほぼ1:2:1の比で出生したことから、Sg2欠損は個体発生過程には影響を及ぼさないことが示唆された。また、ホモ接合体Sg2-KOマウスの成長・発達は、通常の飼育条件下では野生型と変わらず、明らかな形態的・機能的異常も認められなかった。さらに、ホモ接合体Sg2-KOマウスの交配でも正常に新生仔マウスが出生することから、雌雄の生殖機能の液性調節についてもSg2遺伝子欠損は影響しないことが示された。以上の結果から、Sg2単独欠損は他のグラニン蛋白の存在により機能的に代償され、通常の飼育条件下ではホルモン分泌異常の症候を示さないことが明らかにされた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度はCOVID-19感染拡大により、旭川医大と秋田県立大の2つの研究拠点間での往来ができなくなったため、また緊急事態宣言発令期間中には各所属機関での研究活動が制限されたため、当初計画していた実験、特に新規に確立されたSg2-KOマウスからの形態学的解析用組織標本採取や下垂体前葉を標的としたホルモン分泌負荷実験について、進捗状況の遅れが生じた。ただし、本研究課題の基盤となる新規Sg2-KOマウスの確立は既に成功し、基礎的な解析(Sg2-KOマウスの遺伝子欠損部位の塩基配列決定、体重増加曲線の解析や行動解析、生殖能力の評価など)は順調に進展しているので、当初の研究計画に沿った目標達成に関しては、2021年度以降にCOVID-19感染拡大傾向が収束すれば、十分挽回可能と考えている。

今後の研究の推進方策

2020年度の解析でSg2-KOマウスが通常の飼育条件下ではホルモン分泌異常の症候を示さないことが明らかになったので、2021年度にはまず、このマウスを高脂肪/高糖質食で飼育して膵島β細胞に内分泌学的負荷をかけ、異常な体重増加や耐糖能異常など2型糖尿病様の症候や膵島β細胞の微細構造変化が生じるかどうか、既に得られているSg3-KOマウスの所見と比較しながら、解析を進める予定である。また、2020年度に穂坂正博が新規確立したSg2-KOマウスは、現在、秋田県立大の研究室で交配・繁殖を進めてコロニーを拡大しつつあり、2021年度中には遺伝子改変マウスバンクに寄託・譲渡する予定(理化学研究所バイオリソースセンターと折衝中)である。この作業と並行して、旭川医大の教育研究推進センター動物実験施設にもSg2-KOマウスをクリーンアップして導入すべく、準備・手続きを進めている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Optimizing the reaction temperature to facilitate an efficient osmium maceration procedure.2020

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Koga, Satoshi Kusumi, Tsuyoshi Watanabe
    • 雑誌名

      Biomedical Research (Tokyo)

      巻: 41 ページ: 161-168

    • DOI

      10.2220/biomedres.41.161

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] セクレトグラニンIII欠損マウスにおいて高脂肪/高糖質食負荷時に顕在化する耐糖能異常2021

    • 著者名/発表者名
      渡部剛、甲賀大輔、森永涼介、穂坂正博
    • 学会等名
      第126回日本解剖学会全国学術集会/第98回日本生理学会大会 合同大会
  • [学会発表] 視床下部-下垂体後葉系で発現するグラニン蛋白2021

    • 著者名/発表者名
      森永涼介、渡部剛
    • 学会等名
      第126回日本解剖学会全国学術集会/第98回日本生理学会大会 合同大会

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公開日: 2021-12-27  

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