研究課題/領域番号 |
20H03415
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
和栗 聡 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30244908)
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研究分担者 |
田村 直輝 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (70745992)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | p62 / 液-液相分離 / 液滴 / 電子顕微鏡解析 / オートファジー |
研究実績の概要 |
(1)p62変異がp62陽性液滴の微細形態に与える影響を調べるため、各種変異を持つp62にGFP を付加したcDNAをp62欠損HeLa細胞に導入し、形成されたGFP陽性液滴を相関光学-電子顕微鏡法(CLEM)を用いて解析した。変異の部位としては、p62同志の結合に必要なPB1ドメイン(K7A, D69A)、ユビキチンとの結合部位(S403A)、オートファジー隔離膜局在分子であるLC3との結合部位(各種LIR変異)、転写因Nrf2の制御因子であるKeap1の結合部位(各種KIR変異)を用いた。その結果、PB1ドメイン変異を除く変異p62は高発現により細胞内液滴を形成し、その形態はほぼ円形で内容物として粒子状あるいは線維状成分が均一に分布していた。また、その集積の程度、すなわち電子密度が変異により若干異なっていた。以上より実験系の確立がほぼ終了した。 (2)高浸透圧ストレス環境で誘導されるp62液滴形成において、NBR1、OPTN、NDP52、TAX1BP1など他のオートファジーアダプター群の挙動を調べたところ、p62陽性液滴への移行度、およびオートファジー分解の程度が分子によって異なることが分かった。また、これら分子はmRNAを含むストレス顆粒には移行しにくいことが分かった。さらに電子顕微鏡観察により、このタイプのオートファゴソームは飢餓誘導によるオートファゴソームとはサイズや内容物の電子密度が異なっていた。本年度で高浸透圧ストレスによるオートファジーアダプター分子の液滴形成・分解における基盤的な理解が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CLEMによる変異p62を有する液滴の電子顕微鏡解析法を確立し、その性状を捉えることに成功した。これを踏まえ、疾患関連p62変異の解析を準備中である。また、高浸透圧ストレスにおけるp62液滴の生化学および形態学的性状に関する理解は進んだものの、p62液滴の単離には至らなかったため、プロテオーム解析は次年度以降に行うこととした。疾患と関係づける新たな研究項目として、乳癌におけるp62液滴の免疫組織学解析の準備を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞系を用いたCLEM解析の次段階として、筋委縮性側索硬化症および前頭側頭型認知症に関連したp62変異をもつ液滴のCLEM解析を推進する。また、高浸透圧ストレスにおけるp62液滴と形成について、特にストレス顆粒との比較解析を推進する。また蛍光タンパク質の発現を伴わないp62液滴の単離とプロテオーム解析への挑戦を継続する。さらに、疾患への応用としては新たに乳癌におけるp62液滴の解析を開始する。この研究項目に関しては現在本学倫理委員会に申請中である。乳癌は遺伝子発現によるサブタイプ分類が進んでおり、それらとの関連性を見出せることを期待する。
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