研究課題/領域番号 |
20H03417
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
西条 寿夫 富山大学, 学術研究部医学系, 特別研究教授 (00189284)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 上丘 / 扁桃体 / 膝状体外視覚系 / 顔 / ヘビ |
研究実績の概要 |
本年度は、「サル扁桃体および上丘におけるヘビの本能的認知機構」を中心に研究を実施した。本研究では、まずサルに遅延標本非照合(DNMS)課題を訓練し、1)ヘビ(4種類)、ヒト(4種類)およびサル(4種類)の顔、サルの手(4種類)、単純図形(4種類)、肉食獣 (4種類:虎、豹等)、猛禽類 (4種類ワシ等) 、および霊長類を捕食しない非捕食動物 (4種類:ラット、鶏等)からなる標準原画像、および2)コントロール画像[ヘビ画像の低レベル特徴量をランダム化(フーリエ変換、ウェーブレット変換)したランダム化ヘビ画像、およびヘビ以外の画像を用いて低レベル特徴量(色ヒストグラムおよび各色チャンネルのスペクトル振幅)をヘビ画像と同等にした補正画像]の画像識別を学習させた。ついで麻酔下で強化プラスチック製Uフレームをサルの頭蓋骨にデンタルセメントおよびチタン製ボルトを用いて慢性的に埋め込んだ。手術回復後(2週間後)、上丘および扁桃体からニューロン活動の記録し、まず扁桃体ニューロンの視覚応答を解析した。その結果、扁桃体ニューロンは、他の動物の画像と比較して、ヘビならびにサルおよびヒトの顔画像に対する応答潜時が早く、かつ応答強度が大きく、特にヘビ画像に対する応答性が高いことが判明した。一方、これら扁桃体ニューロンのコントロール画像に対する応答性は低いことから、ヘビならびにサルおよびヒトの顔画像に対する高い応答性は、画像の低レベル特徴量の違いによるものではないことが明らかになった。さらに、扁桃体ニューロンは、ヘビ画像の高空間周波数成分と比較して、同画像の低空間周波数成分に対する応答性が高いことが判明した。以上より、扁桃体は、低空間解像度のヘビ画像に対する高い応答性を有することが判明し、霊長類の扁桃体が霊長類の天敵であるヘビ検出に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であるサル上丘及び扁桃体ニューロン活動の記録を予定通り行なうことができた。解析では、扁桃体ニューロンの解析を先に行ったが、上丘ニューロンの記録も順調に進行している。また、記録実験を行わないサル訓練中において、本申請課題と関連するサル内側前頭葉ニューロンのヘビ画像に対するニューロン応答を再解析した。この解析結果に基づき、条件付けの神経機構において内側前頭前野と扁桃体間にポジティブフィードバック機構が作動しており、同機構がヒトのヘビ恐怖症の発症機構に関与しているという仮説を提唱し、論文投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、上丘を中心にニューロン活動の記録数を増やしていく予定である。以上により、来年度中に、「サル扁桃体および上丘におけるヘビ画像の本能的認知機構」の研究データを取得することができると予想される。また、「膝状体外視覚系における顔の種特異的識別機構」および「膝状体外視覚系ニューロンのガンマオシレーションによる情報処理の神経機構」については、最終年度に行う予定である。
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