本年度は、1)ヘビの本能的認知機構におけるサル扁桃体および上丘ニューロンの応答性の解析(課題1)、および2)上丘および扁桃体ニューロンの刺激誘発性ガンマオシレーションの解析(課題2)を行った。課題1では、遅延標本非照合課題を訓練したサルの上丘および扁桃体からニューロン活動を記録し、1)ヘビ(4種類)、ヒト(4種類)およびサル(4種類)の顔、サルの手(4種類)、単純図形(4種類)、肉食獣 (4種類)、猛禽類 (4種) 、および霊長類を捕食しない非捕食動物 (4種類)からなる標準原画像、および2)コントロール画像[ヘビ画像の低レベル特徴量をランダム化(フーリエ変換、ウェーブレット変換)したヘビ画像、およびヘビ以外の画像を用いて低レベル特徴量をヘビ画像と同等にした補正画像]を呈示し、上丘および扁桃体ニューロンの視覚応答を記録・解析した。その結果、扁桃体および上丘よりそれぞれ95個および366個の視覚応答ニューロンを記録した。視覚刺激に対する応答潜時は上丘ニューロンの方が扁桃体ニューロンより短かったが、扁桃体および上丘ニューロンの応答性は同様で、ヘビ画像に対する応答潜時が他画像より短く、またヘビ画像に対する応答強度は他画像より大きかった。さらに、ヘビ画像に対する応答強度は、上記コントロール画像より有意に大きく、ヘビ画像に対する高い応答性は、ヘビ画像の低レベル特徴量によるものではなくヘビの形状に依存したものであることが明らかになった。課題2では、各刺激応答について呈示前と呈示中のデータからそれぞれ自己相関ヒストグラムを作成し、ガンマオシレーションの周波数ならびにオシレーション強度を解析した。その結果、ガンマオシレーションの周波数には刺激の種類による差は認められなかったが、刺激後200ms以内の早期にはヘビに対するガンマオシレーション強度が他画像より大きいことが判明した。
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