研究課題
蛍光非天然アミノ酸 (fUAA) をDonorとして、遷移金属イオンCu2+をAcceptorとして用いる蛍光共鳴エネルギー移動(tmFRET)解析は、ラベルが蛍光タンパク質等に比べ格段に小さいこと等から、イオンチャネル分子内の微細構造変化の検出に有用である。我々は、膜電位センサーを持たないATP受容体P2X2が示す膜電位依存的ゲーティングの分子基盤について解析してきた。そして、fUAAを用いた膜電位固定下蛍光解析法により、第2膜貫通部位のAla337局所に強い電場の集約があること、ATP結合時にその領域に動き入る第1膜貫通部位のPhe44とAla337の相互作用が、膜電位の関知を担っていることを明らかにした。本研究では、Phe44およびその近傍の膜電位依存的構造変化を捉えるために膜電位固定下tmFRET (VC-tmFRET) 法を確立することを目的とした。VC-tmFRET法では、Cys残基を導入しその位置に結合させたTETAC-Cu2+等をAcceptorとして用いる。そこで、fUAAをAla337に導入した上で、TETAC-Cu2+結合のための Cys残基の導入位置の最適化を試みた。Phe44の近傍に位置するGln37にCys残基を導入した変異体Q37Cは、正常なチャネル機能を示した。CuSO4とTETACを前もって反応させてTETAC-Cu2+を作成し、それを変異体に投与してCys残基に結合させることを試みた。各変異体に対し、TETAC-Cu2+ 濃度 10 uM, 1 mM等を用い、1分, 10分等の時間、反応させた。しかし、いずれの条件においても、反応による、fUAAの蛍光強度の有意な減少は観察されずtmFRETが起きていることが確認できなかった。これは、TETAC-Cu2+のラベリングが成功していない可能性を示唆するため、今後、さらに条件検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
方法論の確立に向けて、種々のコントロール実験を行い、慎重に検討を進めている。また、動的構造変化の解析対象となる種々のイオンチャネルの現象の電気生理学的解析による知見の蓄積は順調に進んでいる。
TmFRETの検出に向け、条件検討を重ね、確実な実験系を確立する。その上で、対象とするイオンチャネルの動的構造変化に適用する実験を行う。
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BMC Mol Cell Biol
巻: 22 ページ: 3
10.1186/s12860-020-00337-3