研究課題
本研究課題達成のために令和2年度は下記の検討を行った。1)肥満・脂肪肝の病態におけるRNA制御の分子機構の解析:脂肪細胞におけるCNOT4を介してSREBPシグナルを活性化させる分子機構について、上流因子の探索を行ったところ遺伝子Xが候補として見出されたことから、遺伝子Xに焦点を当てて解析を進めた。RNA-seqなどの解析からCNOT4欠損による遺伝子Xの発現変化はRNAの発現変動によるものではなく、蛋白質のレベルの変動であった。遺伝子XとCNOT4の結合やCNOT4によるユビキチン修飾について検討したが、直接の蛋白質間相互作用やユビキチン化は見られなかった。翻訳レベルでの制御が考えられたことから、Ribo-seqによる網羅的な翻訳動態の解析を開始した。2)心筋リモデリングにおけるpoly(A)分解因子CNOT6Lの抗線維化作用の解析:CNOT6Lの抗線維化作用について、標的遺伝子の解析のためにCNOT6LあるいはCNOT3に対する抗体を用いてRIP-seq解析を行った。その結果、これまでに見出していた標的因子Fsfに加えて、転写因子Yを見出すことに成功した。転写因子YによるFsfの制御機構について、それぞれのプロモーターあるいは3’UTRのレポータープラスミドを作製してレポーターアッセイを行った結果、CNOT6Lによる発現制御が示唆されたことから、poly(A)鎖長の測定の実験を開始した。また、心臓におけるFsfの産生細胞について、心不全モデルのマウス心臓から細胞を単離するための条件検討を始めた。3)心不全病態におけるRNAを介したエネルギー制御機構の解析:薬剤誘導性のCNOT1ヘテロ欠損細胞を用いて、CCR4-NOT機能低下におけるミトコンドリア呼吸鎖ならびに解糖系の変化を細胞外フラックスアナライザーで計測したところ、ミトコンドリア機能が有意に低下していた。ストレス応答刺激など詳細な解析が必要となった。
2: おおむね順調に進展している
循環代謝病におけるRNA時空間制御機構の解明に向けて成果を上げつつある。
肥満・脂肪肝の病態における小胞体RNA制御の分子機構を解明するため、CNOT4とその結合蛋白RBP-Xの相互作用が遺伝子X を中心にRNA制御に及ぼす影響について解析を進める。CNOT4欠損変異体を用いてRBP-Xとの結合領域を明らかにする。また、RBP-Xによるm6A修飾RNAの認識について、CNOT4欠損あるいはCNOT4ユビキチン活性欠失による影響をRIP-qPCRにより解析し、CNOT4とRBP-XによるRNA制御の分子メカニズムを解明する。これらの解析結果に基づき、CNOT4特異的な翻訳動態の解析(Ribo-seq)あるいは小胞体特異的なRibo-seq解析を検討する。また必要に応じて、CNOT4とRBP-Xの細胞内局在についてイメージング解析を行う。さらに、脂肪細胞特異的なCnot4欠損マウスを作製し、in vivoの脂肪細胞における小胞体RNA制御を解析する基盤技術を確立する。次に、poly(A)分解因子CNOT6Lの抗線維化作用について、心不全モデルでの炎症細胞と心筋細胞ネットワークを明らかにするために、心不全モデルのマウス心臓から心筋細胞、線維芽細胞ならびに各種の炎症細胞を単離し、線維化刺激因子の発現制御の分子メカニズムを細胞種ごとにpoly(A)鎖長の調節機構を中心にPAT assayならびにTAIL-seqで解析する。また、心不全病態におけるCCR4-NOTを介した心筋線維RNA制御、ATPレベル制御の分子機構を解明するために、心筋サルコメアにおける翻訳ならびにpoly(A)鎖長の解析を進める。培養細胞でのCCR4-NOT欠損によるエネルギー代謝動態の変動について詳細な解析を進める。心不全患者の心臓組織や肥満患者の内臓脂肪組織を用いたRibo-seqやMeRIP-seqの解析を行うための検討を進める。
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