研究課題
統合失調症 (SCZ)の病因・病態は未解明であり、その治療は抗精神病薬を用いた対症療法が中心である。ドーパミンD2受容体やセロトニン5HT2受容体遮断作用などを有する第二世代抗精神病薬が第一選択薬として使用されるが、十分な薬物治療をしても約2/3の患者には精神障害が残存し、再発・再燃を繰り返す。治療抵抗性SCZの治療薬としてクロザピンが承認されているが、その有効性も限定的であり、SCZはアンメット・メディカルニーズの高い疾患であり、従来の抗精神病薬の延長線上ではない新しい作用機序を有する治療薬の開発が期待されている。我々は、日本人SCZ患者から同定されたARHGAP10遺伝子変異を有する病態モデルマウスを作出し、その表現型解析から新規治療標的としてRhoキナーゼを同定し、Rhoキナーゼ阻害薬Fasudilの抗精神病様作用を確認して国際特許を申請した。令和2年度は、高次脳機能制御におけるRhoキナーゼの役割を解明するために、in vivo dialysis法を用いて、ドパミンおよびセロトニン遊離に対するFasudilの効果を解析した。その結果、Fasudilは側坐核におけるセロトニンの基礎遊離量を有意に増加させる一方、脱分極誘発性のドパミンおよびセロトニン遊離を用量依存的に抑制した。また、Fasudilがメタンフェタミン処置モデルマウスの視覚弁別障害を改善するメカニズムを解明する目的で、メタンフェタミン処置後の脳内Rhoキナーゼ活性の変化を免疫組織染色法で解析した。その結果、メタンフェタミン処置により線条体などの脳領域でRhoキナーゼ活性が亢進することが示唆された。その他、来年度以降、特定の神経細胞群の神経活動に対するFasudilの効果を調べる予定であり、本年度はその実験に必要なウイルスベクターを作製し、予備試験を開始した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画書に記載した令和2年度の研究計画について、ほぼ予定通りに実施することができた。
大脳基底核に存在する特定の神経細胞集団の活動性をDERADDシステムを用いて操作した際の行動変化を調べるとともに、特定神経細胞群の神経活動に対するRhoキナーゼ阻害剤の効果をGCaMPシグナルを指標としてin vivoで調べる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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