研究課題/領域番号 |
20H03429
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宮田 篤郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (60183969)
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研究分担者 |
神戸 悠輝 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (60549913)
栗原 崇 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60282745)
高崎 一朗 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (00397176)
橋本 均 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (30240849)
吾郷 由希夫 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50403027)
早田 敦子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 助教 (70390812)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド / アストロサイト / アストロサイト-ニューロン乳酸シャトル / PTG / 恐怖記憶 / グルタミン酸受容体 |
研究実績の概要 |
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド (PACAP) の恐怖記憶への関与が示唆されているが、その機能的役割は不明である。当該研究では、恐怖記憶によりアストロサイトのPACAP-PAC1R シグナルで駆動されるアストロサイト-ニューロン乳酸シャトル (ANLS) による恐怖記憶の制御メカニズムの詳細を明らかにする。さらに、PACAP による上記メカニズムに寄与する恐怖記憶の制御分子を見出し、その機能を明らかにする。本研究の成果は、心的外傷後ストレス障害の病因解明や治療薬開発の基盤に寄与することが期待される。 当該年度においては、アストロサイト特異的なプロモーター (GfaABC1D) の下流でHAタグされたribosomal protein l22を発現するアデノ随伴ウイルスを用いて、海馬アストロサイト選択的mRNAの解析により、PAC1およびPTGがアストロサイトに高発現している事を明らかにした。そこで、培養アストロサイトにPACAPを曝露すると、PTGの発現が有意に増加した。さらに受動回避学習試験における記憶獲得の後のマウス海馬PTGの発現が有意に増加することが明らかとなった。そこで、PTGに対するshRNAをデザインし、マウス海馬アストロサイトにおけるPTGの発現を抑制後、行動実験において、オープンフィールド試験の行動に有意な変化は見られないが、Y-字迷路試験および受動回避学習試験において短期記憶のパフォーマンスが有意に減少していた。さらに、PTGの発現を抑制したマウスの海馬においてイオンチャンネル内蔵型グルタミン酸受容体サブユニットであるGluR1、GluR2およびNR2Aの発現が有意に抑制されることが明らかとなった。以上の結果から、海馬においてアストロサイトのPTGは、ニューロンのグルタミン酸受容体の発現に影響を与え、短期記憶を制御する可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、恐怖記憶の制御におけるアストロサイトのPACAP-PAC1Rシグナルの重要性を明らかにするため、アストロサイトのPACAPとその特異的受容体PAC1R に注目し、恐怖記憶によりPACAP/PAC1R シグナルで駆動されるアストロサイト-神経乳酸シャトル (ANLS) による恐怖記憶の制御メカニズムの解明を試み、本研究においては以下の三点を遂行する。 1)アストロサイト特異的PAC1Rの恐怖記憶における機能的役割の解明 2)恐怖記憶のメカニズムにおけるアストロサイト・ニューロン乳酸シャトル(ANLS)の機能的役割の解明 3)恐怖記憶に関与するアストロサイト特異的PACAP-PAC1Rシグナル下流分子の同定とその機能解明 前年度、世界的コロナ感染拡大の影響で、一時海外からの試薬輸入困難などのトラブルもあったが、その後解消し、大学での研究もコロナ下で継続出来る環境にあったので、当初の予定通りの成果を上げることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる今年度は、恐怖記憶によりPACAP/PAC1R シグナルで駆動されるアストロサイト-神経乳酸シャトル (ANLS) による恐怖記憶の制御メカニズムの解明において、すでにアストロサイト特異的PAC1Rの恐怖記憶における機能的役割および、恐怖記憶のメカニズムにおけるアストロサイト・ニューロン乳酸シャトル(ANLS)の機能的役割については、ある程度知見が得られており、それらの検証と共に、恐怖記憶に関与するアストロサイト特異的PACAP-PAC1Rシグナル下流分子の同定とその機能解明に関する残りの実験を速やかに遂行して行く予定である。
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