研究課題/領域番号 |
20H03430
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
飯野 正光 日本大学, 医学部, 特任教授 (50133939)
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研究分担者 |
金丸 和典 日本大学, 医学部, 准教授 (10456105)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カルシウム / 膵β細胞 / インスリン / イメージング |
研究実績の概要 |
膵β細胞は、血中グルコース濃度に依存してCa2+シグナルを発生し、インスリンを分泌する。インスリンは、膵から周期的に分泌されて血糖値を低下させ、その破綻は2型糖尿病の発症に至るがその機構は明らかでない。本研究では、膵β細胞のCa2+シグナルを生体内で観測する新たな研究法を確立するとともに、膵島間の同期性に関与する候補分子を、細胞レベルの研究により抽出する。この二つのアプローチを組み合わせてインスリン分泌の周期性およびその破綻の謎に挑戦する。本年度の実績は以下の通り。 2波長型高感度Ca2+インジケータータンパク質(YC-Nano50)遺伝子を、β細胞のみで発現する遺伝子改変マウスを用い、麻酔後開腹した生体内Ca2+イメージングにより、単一膵島中ではβ細胞同士が同期したCa2+シグナルを示すことの実測に成功した。さらに、膵島間での同期性を示唆する結果を得た。これらの成果の論文発表の準備を行なっている。また、新たなウインドウ法により長期に安定した生体内イメージングを麻酔下で実施できるようにした。さらに無麻酔下の測定を試みている。 膵島間の同期性を制御する因子を検索するため、培養β細胞MIN6を用いて細胞レベルの解析を行った。ムスカリン受容体による同調機構を詳しく解析したところ、ムスカリン受容体刺激に伴い細胞内Ca2+動員が起こるとみられるのに、興味深いが現象が生じることがわかった。この分子機構を探るため、Ca2+シグナルとの関連が想定される分子に対するshRNAを作製して系統的にノックダウン実験を行った結果、候補分子1を見出しており、そのその分子の働きについて解析を進めている。並行して、ミトコンドリア内のCa2+濃度変化について解析を進め、新たな知見が得られており、論文発表の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体内膵β細胞Ca2+イメージングについては順調に進展し、その一部の成果について論文発表の準備を進めている。コロナ禍の影響により、研究協力者の協力が得られにくいことがややあるが重大な問題とはなっていない。細胞レベルの実験についても順調に進展している。並行してミトコンドリアのCa2+動態について解析した結果、新たな知見を得ており、論文発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要および現在までの進捗状況に記載した通り、研究はほぼ計画通りに進展している。このまま、強力に研究を推進していきたい。具体的には以下の通り。 生体内膵島Ca2+イメージング法の確立:全組織・全細胞に組み込んだ2波長型高感度Ca2+インジケータータンパク質(YC-Nano50)遺伝子を、β細胞のみで発現誘導する遺伝子改変マウスを用い、β細胞の生体内Ca2+動態観察を行う。新たなウインドウ法により長期に安定した生体内イメージングを麻酔下で実施できるようにし、無麻酔下の測定を試みる。これにより、インスリン分泌に影響を与える薬物が膵島のCa2+動態に与える影響を観測する。 同期機構の細胞・分子レベルの解析:グルコース刺激に伴うミトコンドリア内のCa2+濃度変化について解析を行い、論文発表の準備を進める。膵島間の同期性を制御する因子を検索するため、培養β細胞MIN6を用いて細胞レベルの解析を行う。候補分子の機序に迫るため、膜電位や細胞内Ca2+放出などへの影響をイメージング法を活用して解析する。
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