研究課題
本邦における子宮内膜がんの罹患数は婦人科悪性腫瘍の第一位であり、今後も患者数の増加が見込まれる。子宮内膜がんの標準治療は外科手術による子宮摘出だが、若年層患者の増加を鑑みると分子標的治療を基盤にした妊孕性温存治療法の開発が重要である。我々はがん公開データベースを再解析することで、子宮内膜がんではヒストンメチル化酵素であるKMT2ファミリー遺伝子に高頻度で変異が認められることを見出した。特にKMT2C/Dは、H3K4モノメチル化を介してエンハンサーおよびスーパーエンハンサーを正に制御することで、細胞のアイデンティティ形成に関わることが知られている。本研究ではKMT2変異によるエピゲノム異常が子宮上皮細胞のアイデンティティを喪失させることががん発症・進展の鍵を握るのではないかと推測し、上記仮説の検証およびKMT2変異がんに有効な治療法の開発を目指す。本年度はKMT2変異子宮内膜癌に対する有効な治療標的を探索するために、昨年度までに確立した細胞競合アッセイを実施した。CRISPRライブラリースクリーニングデータベースから抽出した複数の治療標的候補について競合アッセイを実行し、ノックアウトによってKMT2変異子宮内膜癌細胞の生存を抑制し、かつKMT2に変異がない細胞の生存は抑制しない遺伝子を少なくとも2つ検出した。候補に挙がった治療標的のうち1つは、子宮内膜癌以外の癌種に対する治療標的としての可能性が報告されており、阻害剤として作用する低分子化合物も開発されていることから、KMT2変異子宮内膜癌治療への応用も期待できる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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International Journal of Cancer
巻: 152 ページ: 2331~2337
10.1002/ijc.34342