研究課題/領域番号 |
20H03441
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
秋山 泰身 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50327665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己免疫 / 胸腺 / T細胞 / 上皮細胞 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
胸腺の髄質領域に局在する上皮細胞(以下、髄質上皮細胞)は自己免疫疾患の発症抑制に必須である。組織特異的抗原の発現は、髄質上皮細胞による自己免疫抑制に重要であるが、その発現制御機構には不明な点が多い。組織特異的抗原の遺伝子発現を制御する因子として、これまでに転写制御因子Aireが報告された。一方、申請者らは、最近、新たな制御因子としてAscl1を同定した。本課題は、Ascl1陽性髄質上皮細胞とAire陽性髄質上皮細胞による組織特異的遺伝子発現の制御機構を比較検討し、自己免疫抑制の分子メカニズムを解明することを目的とした。 Ascl1とAireのGFPレポーターを用いて、髄質上皮細胞における両因子の発現を確認したところ、Ascl1はCD80の発現が低い画分で高発現細胞と非発現細胞に分かれること、CD80の発現が高い細胞においてもAscl1が低発現することが判明した。一方、これまで報告の通り、Aireの発現はCD80高発現細胞の一部に限定されており、結果としてCD80高発現細胞の一部はAIREとASCL1の両者を発現するとの予想外の結果を得た。そこでASCL1型髄質上皮細胞、AIRE型髄質上皮細胞、両者を発現する細胞、両者を発現しない細胞の4つに分離し、各々の特性を検討することにした。そして、各細胞サブセットの分離のため、ドロップレット方式のシングルセルRNAシークエンス解析を行なった。その結果、予想通りに髄質上皮細胞はAsc1lとAireの発現により4つに分類されることが判明した。各々のサブセットで発現する遺伝子プロファイルをシングルセル解析データから決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はASCL1型髄質上皮細胞とAIRE型髄質上皮細胞の2種類に分離できると考えていたが、予想外なことに両者を発現する髄質上皮細胞と両者を発現しない髄質上皮細胞サブセットも存在すると判明した。したがって、それら各細胞サブセットを分離した上で、遺伝子発現制御機構を検討する必要が生じた。そこで、ドロップレット方式のシングルセル遺伝子発現解析を行い、AIREとASCL1の発現により髄質上皮細胞のサブセットを分離することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、AIRE欠損マウスおよびASCL1欠損マウスの胸腺上皮細胞でシングルセル解析を行うことで、AIREとASCL1を単独で発現する細胞、両者を発現する細胞、両者を発現しない細胞について遺伝子発現のAIREおよびASCL1依存性を検討し、髄質上皮細胞による自己免疫抑制に必要な組織特異的遺伝子の発現に、髄質上皮細胞の多様性がどのように寄与するのか検討を行う。
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