急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などで見られる核膜孔構成因子(ヌクレオポリン)と様々なパートナーの融合により形成されるヌクレオポリン融合遺伝子の産物は、遺伝子発現の異常を引き起こして発がんに寄与している。本研究では、NUP98-HOXA9やSET-NUP214などのヌクレオポリン融合遺伝子産物が核外輸送因子CRM1依存的に形成する核内構造体の構成因子を明らかし、その遺伝子活性化との関連を明らかにする。さらに新規CRM1阻害剤の開発に向けた基盤となる研究を進める。本年度は、ヌクレオポリン融合遺伝子産物の変異体の解析を進めた。特に融合遺伝子のヌクレオポリン部位の変異により相分離を起こさない変異体(相分離変異体)、ならびにパートナー転写因子部位の変異により標的DNAと相互作用しない変異体(DNA結合変異体)について解析を進めた。その結果、野生型のヌクレオポリン融合遺伝子産物に比べて相分離変異体ならびにDNA結合変異体の両者で、標的遺伝子領域への結合や、それに伴う遺伝子発現の活性化の極端な低下が見られた。さらに、昨年度までに見出した融合遺伝子産物の結合因子も同様に、相分離ならびにDNAとの相互作用の双方に依存して標的遺伝子上に集積して機能していることが明らかとなった。以上から、相分離とDNA結合の協調的な作用が、ヌクレオポリン融合遺伝子産物の機能に重要であることが示唆された。
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