研究課題/領域番号 |
20H03448
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
笠原 広介 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (90455535)
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研究分担者 |
白水 崇 三重大学, 医学系研究科, 助教 (00582678)
山川 大史 三重大学, 医学系研究科, 助教 (20631097)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一次線毛 / 細胞分化 / 細胞増殖 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
一次線毛は中心小体から伸長した微小管構造を基本骨格とする細胞小器官である。間葉系幹細胞を含む多くの細胞には、一次線毛を形成する能力を有することが分かっている。一次線毛の形成異常や形態異常は、線毛病と総称される様々な疾患や発生異常(肥満、嚢胞腎、網膜変性、内臓逆位など)を引き起こすことが報告されており、一次線毛の形成メカニズム及び、生理的意義の解明が喫緊の課題となっている。 研究代表者らは、一次線毛の制御因子であるトリコプレインのノックアウト(KO)マウスを作製し、これらの課題にアプローチを進めてきた。その結果、当該マウスは高脂肪食摂取による肥満化(皮下および内臓脂肪の蓄積)に対して著しく抵抗性を持つことを発見した。そのメカニズムを解析したところ、KOマウスの脂肪前駆細胞は、野生型マウスと比較して、顕著に長い一次線毛を有することが分かった。さらに、脂肪前駆細胞の一次線毛の新しい機能として、一次線毛周辺の脂質ラフトの集積を調節し、それによりインスリンシグナルを制御していることも明らかにした。KOマウスの脂肪前駆細胞は、一次線毛の異常により、脂質ラフトを介したインスリンシグナルの低下が起きるため肥満抵抗性を示すことが分かった。 本研究成果により、一次線毛の新しい細胞機能として脂質ラフトの動態制御があることを明らかにし、一次線毛と肥満の関連のメカニズムを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、一次線毛の形成機構の解明及び、一次線毛による細胞増殖制御の分子メカニズム解明を目的としてきたが、それに加えて、一次線毛による細胞分化の制御機構についても明らかにし、その研究成果を国際的に有名な科学雑誌Cell Reports(34;108817, 2021)に報告した。以上より、当職の研究計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、皮下や内臓脂肪組織における脂肪前駆細胞の一次線毛の役割を明らかにしてきた。一方、それ以外の組織、例えば筋肉組織などにおける間葉系前駆細胞においても一次線毛が形成されることが報告されており、重要な生理機能を担っている可能性がある。本年度は、トリコプレインのノックアウトマウスを用いて、間葉系前駆細胞における一次線毛の形成動態の異常の有無や、それによる生理機能への影響を詳細に解析することを目指す。
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