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2021 年度 実績報告書

ナルディライジンによる多面的恒常性維持機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20H03449
研究機関滋賀医科大学

研究代表者

西 英一郎  滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30362528)

研究分担者 大野 美紀子  滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (10583198)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードナルディライジン / 恒常性 / エネルギー代謝 / 抗体産生 / ペプチダーゼ
研究実績の概要

ナルディライジン(NRDC)欠損マウスは、低体温、低インスリン血症、徐脈、低血圧などを呈したが、運動量、酸素消費量は上昇しており寿命短縮は認めなかったことから、野生型マウスとは異なるセットポイントで恒常性、健康を維持しているマウスと考えられた。本研究では、1) 肝細胞特異的NRDC欠損(LKO)マウスが呈した「熱放散増加によるエネルギー消費亢進の表現型」を基盤として、エネルギー代謝におけるNRDCの役割を、2) B細胞特異的欠損マウスが呈した「抗体産生能低下」を基盤として、抗体産生・自己免疫疾患におけるNRDCの役割を明らかにする。1)では肝NRDCノックダウンが代謝改善療法となる可能性を検証する。さらに最新のDegradomics法を用いてペプチダーゼNRDCの基質タンパク質同定を試み、酵素活性欠損変異体NRDCノックインマウスの解析と併せて、NRDCのペプチダーゼ活性の意義を解明する。
1)においては、前年度にLKOマウス肝臓で発現上昇する肝細胞由来液性因子Xが、褐色脂肪組織(BAT)の熱産生を誘導している可能性が示されたことから、2021年度にはLKOマウスに因子Xに対するsiRNAを投与し、因子XのノックダウンによりNRDC欠損によるBAT熱産生上昇が部分的に抑制されることを示した。2)においては、B細胞、T細胞特異的NRDC欠損マウスを作製し、それぞれにおける抗体産生能を評価し、B細胞NRDC欠損により抗体産生量が低下し、T細胞NRDC欠損により抗体親和性が低下するという結果が得られた。引き続き、肝細胞NRDCの代謝表現型への影響、にB細胞、T細胞NRDCの獲得免疫における役割を明らかにしていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、各論としてはNRDCが関与する 1)エネルギー代謝と代謝性疾患、2)抗体産生と自己免疫疾患において、NRDCがいかなる分子機能を介して恒常性維持に寄与しているかを明らかにすることである。また各論に共通するテーマとして、NRDCのペプチダーゼ活性の役割に着目して研究を進める。当該年度においては、1)2)において概要欄に記載した成果が得られたことから、研究は極めて順調に進展していると考えられる。NRDCのペプチダーゼ活性の生体における役割を明らかにするため、ペプチダーゼ不活性型Nrdcノックインマウス(E>A KIマウス:ホモ接合体)を作製したが、遺伝型背景がpure BL6の場合、周産期で100%死亡することがわかった。そこで、ICR系と戻し交配したところ一定数の成体マウスを得ることに成功したため、今後は同遺伝子背景のマウスを用いて研究を進める。以上から、全体としては「おおむね順調に進展している」とした。

今後の研究の推進方策

目的1)エネルギー代謝と代謝性疾患におけるNRDCの意義解明: LKOマウス肝臓で発現上昇する肝細胞由来液性因子Xが、BAT熱産生を誘導している可能性が示唆されたため、2021年度には、液性因子Xに対するsiRNAを搭載した脂質ナノ粒子を作製し、LKOマウスに経静脈投与してノックダウンを試みた。その結果、NRDCの肝細胞ノックアウトによる代謝系表現型の一部がレスキューされた。今後は、NRD欠損によって因子Xの発現が亢進する分子機構について、詳細に検討する。
目的2)抗体産生と自己免疫疾患におけるNRDCの意義解明:B細胞特異的NRDC欠損マウス、T細胞特異的NRDC欠損マウスの抗体産生能、B細胞、T細胞サブセット分画、二次リンパ組織構造などを引き続き解析するとともに、in vitroのB細胞、T細胞分化系を用い、NRDCがリンパ球分化に果たす役割を検討する。
目的3) NRDCのペプチダーゼ活性の役割解明:上記したICR系 E>A KIマウスを用いて、主に代謝系、免疫系の表現型を解析し、ノックアウトマウスとの比較検討を行う。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Technion-Israel Institute of Technology(イスラエル)

    • 国名
      イスラエル
    • 外国機関名
      Technion-Israel Institute of Technology
  • [雑誌論文] Glycaemia and body weight are regulated by sodium-glucose cotransporter 1 (SGLT1) expression via O-GlcNAcylation in the intestine2022

    • 著者名/発表者名
      Nishimura Kimihiro、Fujita Yukihiro、Ida Shogo、Yanagimachi Tsuyoshi、Ohashi Natsuko、Nishi Kiyoto、Nishida Atsushi、Iwasaki Yasumasa、Morino Katsutaro、Ugi Satoshi、Nishi Eiichiro、Andoh Akira、Maegawa Hiroshi
    • 雑誌名

      Molecular Metabolism

      巻: 59 ページ: 101458~101458

    • DOI

      10.1016/j.molmet.2022.101458

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nardilysin in adipocytes regulates UCP1 expression and body temperature homeostasis2022

    • 著者名/発表者名
      Saijo Sayaka、Ohno Mikiko、Iwasaki Hirotaka、Matsuda Shintaro、Nishi Kiyoto、Hiraoka Yoshinori、Ide Natsuki、Kimura Takeshi、Nishi Eiichiro
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-022-07379-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Serum anti-DIDO1, anti-CPSF2, and anti-FOXJ2 antibodies as predictive risk markers for acute ischemic stroke2021

    • 著者名/発表者名
      Hiwasa Takaki、Wang Hao、Goto Ken-ichiro、他19名、Ohno Mikiko、Nishi Eiichiro、他45名、Iwadate Yasuo
    • 雑誌名

      BMC Medicine

      巻: 19 ページ: -

    • DOI

      10.1186/s12916-021-02001-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Nardilysin is a Potential Biomarker for the Early Diagnosis of Non-St-Segment Elevation Acute Coronary Syndrome, A Multicenter Prospective Cohort Study, Nardi-ACS Study2021

    • 著者名/発表者名
      Ohno M, Shiomi H, Yano M, Aizawa T, Nakano Y, Yamagami S, Kato M, Ohya M, Chen P-M, Nagao K, Ando K, Kadota K, Yokomatsu T, Inada T, Kurokawa M, Morimoto T, Kimura T, Nishi E
    • 学会等名
      American Heart Association’s annual Scientific Sessions 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] 多機能プロテアーゼによる心拍数制御機構2021

    • 著者名/発表者名
      大野 美紀子, 松浦 博, 牧山 武, 糀谷 泰彦, 西 清人, 岩崎 広高, 松田 真太郎, 木村 剛, 西 英一郎
    • 学会等名
      第94回日本薬理学会年会
  • [学会発表] ナルディライジンによる核内受容体ROR/REV-ERB活性調節機構2021

    • 著者名/発表者名
      平岡義範、古市真唯、鎌田真由子、斉藤沙樹、久米典昭、吉種光、深田吉孝、池田正明、西英一郎
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] TおよびB細胞のナルディライジンによる抗体産生調節機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      茶谷元晴, 茶谷元晴, 藤井貴之, 藤堂景史, 大野美紀子, 西清人, 平田多佳子, 安藤朗, 西英一郎
    • 学会等名
      第26回日本病態プロテアーゼ学会学術集会
  • [学会発表] 肝細胞のナルディライジンは褐色脂肪組織の熱産生を制御する2021

    • 著者名/発表者名
      西清人, 岩崎広高, 松田真太郎, 松田真太郎, 大野美紀子, 西英一郎
    • 学会等名
      第53回日本動脈硬化学会学術集会
  • [学会発表] Metalloprotease nardilysin controls heart rate through the transcriptional regulation of ion channels critical for sinus automaticity2021

    • 著者名/発表者名
      Ohno M, Matsuura H, Makiyama T, Nishi K, Iwasaki T, Matsuda S, Kita T, Kimura T, and Nishi E
    • 学会等名
      第31回日本循環薬理学会
  • [学会発表] 分岐鎖アミノ酸代謝産物によるピルビン酸代謝制御機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      西 清人、西 英一郎、Rong Tian
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 脂肪細胞のNardilysinは細胞における酸素需要および低酸素誘導因子(HIF1-α)シグナルを介してインスリン感受性を制御する2021

    • 著者名/発表者名
      松田真太郎、岩﨑広高、西 清人、大野美紀子、西英一郎
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] ナルディライジンによる核内受容体ROR/REV-ERB活性調節機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      平岡義範、古市真唯、村瀬満政、久米典昭、吉種光、深田吉孝、池田正明、西英一郎
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [図書] 創薬研究者・アカデミア研究者が知っておくべき最新の免疫学とその応用技術2021

    • 著者名/発表者名
      執筆者:101名、技術情報協会
    • 総ページ数
      598
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-856-2
  • [備考] 滋賀医科大学 薬理学講座 ホームページ

    • URL

      http://www.shiga-med.ac.jp/pharm/index.html

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公開日: 2022-12-28  

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