研究実績の概要 |
SLFN11遺伝子はSLFNファミリーの一つであり、そのがん細胞における発現は、多くの抗がん化学療法剤の殺細胞活性や高感受性と相関し、患者にとって良好な予後因子となるとされている。しかし、SLFN11の機能とそのメカニズムはいまだ明らかではない。我々は、SLFN11発現によるDNA損傷感受性増大がDNA複製フォークの分解促進に起因することを発見した。そのメカニズムを明らかにするため、SLFN11が損傷部位、複製ストレス部位である新生DNA鎖へのRAD51集積を低下させ、そのためMre11やDNA2などのヌクレアーゼのアクセスが上昇することを見出し報告した。さらに、SLFN11がレーザーマイクロ照射部位に照射後短時間に集積することをGFPを融合したSLFN11発現によって見出した。しかし、他のSLFN11に類似したファミリーメンバーである、SLFN5とSLFN13においては、このような集積を観察することはできなかった。マウスにおけるSLFN11類似分子である、SLFN8とSLFN9の機能を探るため、同様の検討を行ったところ、これらはSLFN11と同様の集積を認めた。SLFN8とSLFN9は非常にホモロジーが高く、またSLFN11とも構造的に類似しており、SLFN8/9がSLFN11のオーソログである可能性が考えられた。そこで、ヒトSLFN11のノックアウト細胞へのSLFN11, SLFN8、SLFN9それぞれの発現、また、SLFN8/9のマウスB細胞株におけるノックアウト細胞へのSLFN11, SLFN8, SLFN9をそれぞれ発現させ、複製ストレスへの感受性や、RAD51フォーカスへの影響について検討した。これらの検討の結果、SLFN8/9とSLFN11は、ヒトとマウスのノックアウトにおいて、同様の機能を示すことが判明した。これらの結果は現在投稿中である。
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