研究課題/領域番号 |
20H03452
|
研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
井ノ口 仁一 東北医科薬科大学, 薬学部, 特任教授 (70131810)
|
研究分担者 |
狩野 裕考 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (40774279)
稲森 啓一郎 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (70710375)
新田 昂大 東北医科薬科大学, 薬学部, ポスト・ドクター (30847976)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ガングリオシドGM3 / TLR4 / RAGE / パイロトーシス / LPS / HMGB1 / IL 1-alpha |
研究実績の概要 |
自然免疫受容体TLR4を介した慢性炎症は、メタボリックシンドロームの発症を決定づける強力な増悪因子である。どのようにして、恒常性維持機構としての自然免疫応答が、疾患発症原因としての慢性炎症反応へと変貌するのか、その分子メカニズムの解明と新たな診断法・治療法の開発が大きく期待されている。申請者らは新たに、肥満・糖尿病時に増加するスフィンゴ糖脂質:ガングリオシドGM3およびグロボ系糖脂質Gb3がTLR4の内因性モジュレーターとして慢性炎症を誘発すること、その生理活性が脂質部分のアシル鎖構造(鎖長、不飽和度、水酸化)の違いによって制御されることを見出した(EMBO J 2020)。本研究では「スフィンゴ糖脂質を新基軸としたTLR4活性化制御メカニズム」を解明し、①GM3/Gb3の産生メカニズム、②TLR4リガンドとして機能する分子基盤、③生体内で炎症を誘発するメカニズム、④疾患発症プロセスへの関与を、新たに提示する。令和2年度は、③生体内で炎症を誘発するメカニズムについて、特にGM3が生体内でLPSミミックとして働き、HMGB1を介したTLR4/RAGE(終末糖化産物受容体)/インフラマソーム活性化を制御する可能性について検討した。これまでの検討により、極長鎖GM3によってIL-1α産生が誘導・促進されることをマウス個体レベルで確認している)。LPSプライミング後の極長鎖GM3(C24)の投与によって、LPS投与時と同様に血清IL-1αの産生が増加する。さらに、LPSとGM3(C24)は相乗的に働き、血清IL-1αの産生を増強させる。一方、炎症抑制性の長鎖GM3(C16)は、LPSとGM3(C24)による相乗効果を抑制する。これらの結果は、内因性のGM3がHMGB1やLPSと協調的に作用し、TLR4/RAGEを介したパイロトーシス経路に関与する可能性を示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極長鎖GM3がHMGB1やLPSと協調的に作用し、TLR4/MD2を活性化することを我々は報告している(EMBO J 2020)。この発見に加え、極長鎖GM3はRAGEを介したパイロトーシス経路に関与する可能性を見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
① GM3によるTLR4/RAGE/インフラマソームの活性制御メカニズムの解明 極長鎖GM3がHMGB1やLPSと協調的に作用し、TLR4/MD2を活性化することを我々は報告している(EMBO J 2020)。この発見に加え、極長鎖GM3はRAGEを介したパイロトーシス経路に関与する可能性を見出した。そこで、TLR4-KO、RAGE-KO、Casp11-KOマウス等に対して同様にLPSと各GM3分子種の投与実験を行い、GM3によるパイロトーシス誘導メカニズムを明らかにする。ヒト単球およびマウスマクロファージの炎症応答は、極長鎖GM3の存在下で大幅に増強される。そこで、GM3存在下でHMGB1によるTLR4/RAGE/インフラマソームの活性化を解析する。TLR4の細胞内動態とシグナル制御について、内在化、NF-κB活性化、IL-1α/βの細胞内産生を検出する。RAGEについては、内在化、リソソーム局在、LPSの細胞内取り込みを検出する。パイロトーシスについては、Gasdermin Dによる細胞膜ポアを経由したIL-1α/β、HMGB1、LDHの放出をELISAによって検出する。インフラマソーム活性化については、その指標となるCaspase 1/11を介したIL1βやGasdermin Dのプロセッシングをウェスタンブロット法で検出する。加えて、LPSと同様に、新たにGM3がHMGB1と直接相互作用する可能性について検討する。安定同位体標識GM3のHMGB1との結合や、RAGEを介した細胞内取り込みを、質量分析法による高感度検出によって解析する。さらに、GM3とCaspase 11の直接相互作用についても検討する。これらにより、内因性リガンド間の相互作用を介して慢性炎症が惹起されるメカニズムを明らかにする。
|