研究課題
自然免疫応答や細胞死応答の起点となるToll-like receptor 4 (TLR4)およびCaspase-4/11 (Casp-4/11)は、グラム陰性菌外膜の糖脂質であるリポ多糖（LPS）の受容体として同定された。一方で、それらの受容体は、生体内で生じる“内因性リガンド”を介して、無菌的に活性化することも近年明らかとなってきた。我々は、極長鎖ガングリオシドGM3（アシル鎖長 C22, C24など）は単球・マクロファージ上のTLR4の活性化を強く促進し、反対に長鎖GM3（C16, C18など）はTLR4の活性化を抑制することを見出している。メタボリックシンドロームや慢性炎症病態におけるヒト血清およびマウス脂肪組織では、炎症抑制性の長鎖GM3は減少し、反対に、炎症促進性の極長鎖GM3の発現が増加することから、GM3分子種バランスは生体恒常性の維持に関与していることが示唆される。最近我々は、極長鎖GM3は、第二のリポ多糖受容体：Casp4/11を介した炎症性細胞死：パイロトーシスを大きく亢進させ、反対に、長鎖GM3は、それらの応答を強く抑制することを見出した。TLR4活性化によって産生されるサイトカインのうち、TNF-αを含む多くのサイトカインは分泌シグナルをもち、刺激後、すみやかに放出されるが、IL-1αなどの一部のサイトカインは分泌シグナルをもたず、TLR４活性化に加えて、Casp4/11およびGsdmDを介した細胞膜ポア形成によって放出される。極長鎖GM3によるIL-1α放出の促進は、これらの因子を経由しており、加えて、Galectin-3存在下でその応答がさらに促進されることも見出した。これらの知見から、「GM3は生体内におけるLPS類似性の内因性リガンドとして働き、TLR4およびCasp4/11を介した炎症・細胞死応答を制御している」と予想される。
1: 当初の計画以上に進展している
最近我々は、極長鎖GM3は、第二のリポ多糖受容体：Casp4/11を介した炎症性細胞死：パイロトーシスを大きく亢進させ、反対に、長鎖GM3は 、それらの応答を強く抑制することを見出した。TLR4活性化によって産生されるサイトカインのうち、TNF-αを含む多くのサイトカインは分泌シグナルをもち、刺激後、すみやかに放出されるが、IL-1αなどの一部のサイトカインは分泌シグナルをもたず、TLR４活性化に加えて、Casp4 /11およびGsdmDを介した細胞膜ポア形成によって放出される。極長鎖GM3によるIL-1α放出の促進は、これらの因子を経由しており、加えて、G alectin-3存在下でその応答がさらに促進されることも見出した。
GM3のTLR4経路及びパイロトーシス経路におけるシグナル伝達や細胞内動態への関与をさらに検討する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
The EMBO Journal
巻: 40 ページ: e107766
10.15252/embj.2021107766
The FEBS Journal
巻: - ページ: -
10.1111/febs.16076
