研究課題/領域番号 |
20H03453
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
今居 譲 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (30321730)
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研究分担者 |
井下 強 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (20601206)
柴 佳保里 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30468582)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | α-Synuclein / ミトコンドリア / CHCHD2 / PLA2G6 / ショウジョウバエ / iPS / ELOVL7 / 脂質 |
研究実績の概要 |
本研究では、α-Synucleinの種の生成と除去の機序を、臨床でのエビデンスが得られているミトコンドリアと脂質の2つのリスク要因から探索することを計画している。 α-Synuclein凝集においてのミトコンドリア関与に関しては、ミトコンドリアタンパク質CHCHD2について、α-Synuclein凝集が顕著であるパーキンソン病病因変異体とTDP-43の蓄積がみられる筋萎縮性側索硬化症(ALS)バリアントを比較解析した。CHCHD2のALS型バリアントは、ミトコンドリア局在性が減弱しており、TDP-43が凝集する亜ヒ酸処理で細胞質へ移行することを観察した。これに対して、パーキンソン病病因変異体は、ミトコンドリア局在性を維持するものの不溶化傾向にあることが分かった。次ぎに、非アイソトープ条件下でミトコンドリア輸送をモニターする系を立ち上げ、α-Synucleinのモノマーおよび凝集線維が、ミトコンドリアへ輸送される可能性を観察した。さらにこれら2種のCHCHD2変異をもつ神経系培養細胞にて、細胞質およびミトコンドリアのCa2+イメージングの系を立ち上げた(現在も解析中)。 α-Synuclein凝集と脂質との関係については、孤発性およびPLA2G6変異パーキンソン病患者赤血球のリン脂質解析を実施し、PLA2G6変異ハエ同様、リン脂質アシル基の短縮傾向を確認した。さらにPLA2G6のiPSの作製も進めた。 一方で、日本人パーキンソン病家系からα-Synucleinの新たなバリアントV15Aが見つかった。V15A変異はリン脂質への結合が減弱し、易凝集の傾向にあった。 ELOVL7の変異は、これまでのパーキンソン病家系のスクリーニングで見つかっていない。ELOVL7ノックアウトハエは致死になることが分かり、コンディショナルノックアウト系統の作製を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本人パーキンソン病家系から見つかったα-SynucleinのV15Aバリアントは、リン脂質への結合が減弱していた。我々のPLA2G6研究から導き出された「α-Synucleinのリン脂質膜からの解離が、凝集リスクになる」という仮説を支持する観察であり、論文化を進めた(投稿中)。一方、ELOVL7ノックアウトハエは致死になり、解析が計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
CHCHD2変異がα-Synuclein凝集化を促進する機序として、α-Synuclein凝集のミトコンドリア輸送とミトコンドリア内での分解の障害の可能性が考えられた。この可能性の検証を進める。 孤発性およびPLA2G6変異パーキンソン病患者の赤血球のリン脂質解析は、症例数を増やすと共に、血漿中のグルコシルスフィンゴシン(パーキンソン病のリスクとなるGBA1変異で増えることが報告されている)を測定する準備をしている。 ELOVL7とPLA2G6との遺伝学的相互作用解析は、ELOVL7コンディショナルノックアウト系統を作製し、今年度進める。パーキンソン病家系のELOVL7変異スクリーニングは継続して実施する。
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備考 |
Mechanism of α-Synuclein aggregation by the disturbance of biomembrane remodelling. “LIFS Seminar Series”, at Devision of Life Science, Hong Kong University of Science and Technology, Mar. 2021
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