研究課題/領域番号 |
20H03454
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
柳 茂 学習院大学, 理学部, 教授 (60252003)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ユビキチンリガーゼ / アルツハイマー病 / アミロイドβ |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病ではアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質の異常な凝集が引き金となって神経細胞死が誘導されると考えられているが、脳内でAβ凝集がどのように制御されるかについては未だよく理解されていない。私たちは、アルツハイマー病においてAβ凝集がミトコンドリアを介して制御されることを明らかにした(Commun Biol 2021)。本研究では、アルツハイマー病モデルマウスを用いて、ミトコンドリア機能の低下により、毒性の高いAβオリゴマーが蓄積し、アルツハイマー病態が悪化することを明らかにすると共に、ミトコンドリア機能の低下によってAβオリゴマーが産生されるメカニズムとして、脳に沈着するAβ線維の変容が重要な役割を果たすことを示した。これまでAβ線維は、線維自身がAβ凝集の足場となることが知られていたが、ミトコンドリアの機能が低下した脳内において、Aβ線維はAβ凝集、特にAβオリゴマーの形成を強く誘導することが明らかとなった。したがって、加齢に伴うMITOLの機能低下が、アルツハイマー病の増悪を引き起こしている可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルツハイマー病モデルマウスにおいてMITOLを欠損させるとアミロイドβの毒性が顕著に増悪することを明確に示すことができた。そのメカニズムの解析も順調に進み、より毒性の高いAβオリゴマーの蓄積が原因であることを突き止めた。この研究成果はCommun Biolにアクセプトされ、国内外で注目されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果により、ミトコンドリア機能がアルツハイマー病の新しい治療ターゲットになることが示唆された。また、ミトコンドリア機能は老化とともに低下するので、ミトコンドリア機能を活性化する薬剤はアルツハイマー病の発症を予防することが期待される。今後、MITOLの活性化を標的にした薬剤スクリーニングを行いたい。
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