研究課題
私たちは以前、MITOLが小胞体とミトコンドリア接着領域(MAM)の形成を誘導することを明らかにし、その後、MITOL欠損によりカルジオリピンの生合成が低下することを見出していた。今回、MITOLがカルジオリピンの合成に必要なホスファチジン酸の輸送分子因子であるRMDN3/PTPIP51をユビキチン化してホスファチジン酸の輸送を促進していることを示唆した(J. Biochem. 2022)。これらの研究成果は、MITOLはMAMを介して脂質輸送を調節することでミトコンドリアの品質管理に重要な役割をしていることを示すものである。また、MITOLはParkinを基質にしてParkinによるマイトファジーを制御していることを示した(EMBO R 2021)。今後、パーキンソン病の病態におけるMITOLの役割を明らかにする予定である。さらに、心臓特異的MITOL欠損マウスを作製したところ、Drp1の蓄積によるミトコンドリアの断片化が顕著に亢進しており、心筋老化を示すβ-ガラクトシダーゼ染色領域の拡大と線維化の亢進が認められた。最終的にこのマウスは心不全を発症し、半年以内に全て死に至っている。Drp1阻害剤の腹腔投与により、心臓老化の表現型が部分的にレスキューされたことから、MITOLの機能低下がDrp1の蓄積によるミトコンドリアダイナミクスの破綻を誘発し、心臓老化を引き起こすことが示唆された(iScience 2022)。さらに、ウイルスベクターを用いてMITOL遺伝子を人為的に心筋に導入したところ、心機能障害が顕著に改善されたことからMITOLの発現上昇を誘導する薬剤は、虚血性心疾患や心臓老化による心不全の予防・治療薬になることが期待できる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
The Journal of Biochemistry
巻: 171 ページ: 529~541
10.1093/jb/mvab153
iScience
巻: 25 ページ: 104582~104582
10.1016/j.isci.2022.104582
巻: 173 ページ: 1~11
10.1093/jb/mvac092