研究課題
本研究の目的は、エクソソームががん形質発現においてどのような意義をもつのか?を問い、その詳細な分子基盤を解明することにより、がん進展メカニズムに対する理解を深め、新たながん制御戦略への展望を得ることである。そこでこれまでの研究を発展させ、以下の3項目に焦点を絞って、がん進展過程におけるSrcシグナルの制御破綻と、それががん特異的なエクソソーム分泌を亢進させる分子メカニズムを解析することとした。①がん特異的エクソソーム形成を支配する分子機構②がん特異的miRNAの選択的エクソソーム内包機構③がんエクソソームの生体内動態とがん進展今年度は、①に対応するSrcファミリーキナーゼ (SFK)間でラフトへの局在性向とエクソソーム分泌亢進能を調べた。SrcあるいはFynについて脂質修飾部位に変異を入れ同一分子における膜ドメイン局在を強制的に変化させた場合のエクソソーム分泌量を解析したところ、エクソソーム分泌量と膜ドメイン局在の相関を明らかにした。さらにエクソソームだけでなく、細胞膜から分泌されるマイクロベシクルについても同様に解析したところ、マイクロベシクルに内包されるSrcあるいはFynの量が、膜ドメイン局在性と相関することを見出した。また②に関して、これまで見出したSrcの活性依存的にmicroRNAをエクソソームに内包するRNA結合タンパク質について解析を進め、Srcの活性に伴いmicroRNAとの親和性が高くなること、結合のしやすさにはmicroRNAの配列上の類似性があることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
Srcがんシグナルがエクソソーム形成を制御する機構やmicroRNAの選択的内包機構について細胞レベルでの解析を行い、詳細なメカニズムを明らかにしつつある。
これまで見出したSrcシグナル依存的エクソソーム形成/miRNA内包制御因子をSrcがんモデル細胞やSrc活性の高いヒトがん細胞でノックダウンし、放出されるエクソソームを変化させ、生体内で取り込み細胞/組織におけるシグナル経路の活性化状態やmiRNA標的遺伝子の発現変化を解析して、“細胞外Srcシグナル”としてのエクソソーム制御の意義を明らかにしていく。その際には、これまでに確立したBRETを利用し、近赤外で発光するNluc標識エクソソーム分泌細胞をマウス皮下に移植することで、エクソソーム動態を非侵襲的に長期間in vivoイメージングする。この方法により、エクソソーム集積組織を明らかにし、特異的マーカーを利用してエクソソーム取り込み細胞を同定分取する。取り込み細胞集団の形質や遺伝子発現変化を組織染色、RNA-seqなどにより解析し、微小環境の変化を明らかにする。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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https://cancer-c.pref.aichi.jp/cancer-center/ri/01bumon/06shuyo_uirusu/03member.html