研究課題/領域番号 |
20H03457
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研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 |
研究代表者 |
星 美奈子 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(副センター長・部長クラス) (30374010)
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研究分担者 |
村松 慎一 自治医科大学, 医学部, 教授 (10239543)
笹原 智也 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(研究員・PDクラス) (30735345)
豊島 近 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任教授 (70172210)
久保 厚子 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(研究員・PDクラス) (70647792) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナトリウムポンプ / 神経変性疾患 / 神経細胞死 / アルツハイマー病 / タンパク質ータンパク質相互作用 / ペプチド創薬 / コンパニオン診断薬 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病ではAβがトリガーになるが、その形成機構については殆ど不明である。本研究では、申請者らが患者脳から見出した異常凝集体ASPDの立体構造を理解し、構造情報に基づくASPD選択的な新たなPETプローブを開発すること、さらに抗ASPD抗体を組み合わせASPD選択的な血液・脳脊髄液に対する診断方法を確立することを目指す。それにより、Aβ異常凝集体がAD発症に関わるのか、関わるのであればどの段階で関わるのか、という根本の問いに答える道筋を開く。本研究では、①抗ASPDヒト化抗体の樹立、②ASPD結合4残基ペプチドの発見、③ASPD選択的高感度CLEIA測定法の確立、④血液脳関門(BBB)通過促進配列の発見など、申請者らが独自に獲得してきた知見と技術に立脚し「病因解明に根ざしたADのPET診断法と体外診断法の開発」を目指す。研究初期から、製薬企業、PETプローブ開発企業と連携し、体外診断法、PETプローブのいずれについても、有効性が示された場合、コンパニオン診断薬そして臨床診断薬の開発へと展開することを想定しており、社会的還元を視野にいれている。初年度は、1:ASPD選択的抗体の低分子化に取り組み、取り組み、その安定化を目指した。さらに、クライオ電子顕微鏡の技術を立ち上げ、ASPDのクライオ電子顕微鏡解析に着手した。2:ASPD結合4残基ペプチドを最適化するために、4残基アミノ酸を1つ1つ変えたライブラリーを構築しスクリーニングを実施した。3:ASPD選択的高感度CLEIAの諸条件を見直し、脳脊髄液や血液の存在下でもASPDを選択的かつ高感度に検出出来るように測定系をブラッシュアップした。上記のとおり、概ね予定通りに順調に研究を進めることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度については、以下のとおり、新型コロナによる緊急事態宣言のために在宅勤務期間が2か月近くあったが、概ね予定していた3課題について計画を進め、目的を達成することが出来た。進捗としては、 1:ASPD選択的抗体の低分子化に取り組み、その安定化を目指した。さらに、クライオ電子顕微鏡の技術を立ち上げ、ASPDのクライオ電子顕微鏡解析に着手した。2:ASPD結合4残基ペプチドを最適化するために、4残基アミノ酸を1つ1つ変えたライブラリーを構築しスクリーニングを実施した。3:ASPD選択的高感度CLEIAの諸条件を見直し、脳脊髄液や血液の存在下でもASPDを選択的かつ高感度に検出出来るように測定系をブラッシュアップした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、初年度の成果に基づき、以下に取り組む。1:ASPDと抗体あるいはASPD結合4残基ペプチドの相互作用の構造生物学的な理解。体内にいれるためには抗体を最小限化する必要がある。そのため、ASPD抗体由来の一本鎖抗体を作製した。今年度は、本抗体の構造をX線結晶構造解析により解明する。2:ASPD結合4残基ペプチド-BBB通過促進配列キメラ分子のPETプローブへの展開 。基本となる4残基ペプチドから最適なアミノ酸配列を選択するためのライブラリーを構築することに成功した。今年度はこれを用いて、最適な配列をスクリーニングを行い、キメラ分子を作出する。3:ASPD選択的高感度CLEIAを用いたASPDの体外診断法の開発。昨年、0.3 pMから定量的にASPDを検出出来る極めて高感度なCLEIAシステムの構築に成功した(iScience 13: 452-477, 2019:図3)。この系はS/N比が高く、AD患者剖検脳に蓄積するASPD量を定量出来る。昨年度、血漿成分によるCLEIA反応への阻害効果の有無、Fab-HRPによるバックグラウンドの低減、血液用希釈液や使用バッファーの最適化などを検討し、脳脊髄液や血液に最適化したプロトコルを確立した。今年度はこれを持ち手実際に患者由来の脳脊髄液や血漿を用いた解析を実施する。そのために、患者検体を提供していただける組織と提携し、必要な手続きを踏まえた上で、検体を受け入れ解析を行う予定である。
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