研究実績の概要 |
CD163はマクロファージに発現するヘモグロビンスカベンジャー受容体である。M2マーカーとしてしも知られている。病理解剖の症例を用いた検索で、敗血症患者の各臓器ではマクロファージが増加しており、且つCD163が高発現していることを見出した。CD163KOマウスではLPS投与によるエンドトキシンショックが強く、野生型に比べて死亡率が高かった。CD163KOマウスの血中サイトカインを測定したところ、炎症性サイトカインであるIL-6やTNFa, IL1bが有意に高濃度であり、抗炎症性サイトカインであるIL-10は低濃度であった。腹腔マクロファージを用いた研究でもCD163KOマクロファージはM1-likeであった。このことからCD163はM2への分化に重要な役割を果たしていることが示唆された。敗血症患者におけるCD163発現増加は、エンドトキシンによる過剰な免疫反応を制御する役割があると推測される。CD163のシグナルを誘導させる戦略が敗血症治療に有効かもしれない。 イカリソウからマクロファージのM2活性を制御する化合物を単離した研究である。複数のイカリソウ由来成分を解析したところ、limonianin, epimedokoreanin B, icaritin, desmethylicaritinの4種類の化合物がM2マーカーであるCD163の発現を制御した。epimedokoreanin Bと limonianinに関してはStat3の活性化やIL-10の産生を抑制することが明らかとなった。epimedokoreanin Bはがん細胞とマクロファージの共培養によるがん細胞の活性化を制御することができた。マウス肉腫モデルを用いて前臨床試験を行った結果、epimedokoreanin Bは有意に腫瘍の発育や肺転移を抑制することができた。組織を解析してみるとマクロファージのファノタイプ、がん免疫の関連が不明確であったため、epimedokoreanin Bは腫瘍細胞に対する直接的な細胞障害作用にくわえて、マクロファージのProtumor activationを抑制することで、腫瘍の発育を制御したものと思われた。
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