研究課題
本研究期間内において、ヒト悪性黒色腫症例を用いて、腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) 解析を行った。新鮮手術検体から分離したTILを単細胞解析行い、T細胞受容体(TCR)遺伝子解析および遺伝子発現解析を行った。合計で5症例を検討している。その結果、各症例において、TIL 内に発現頻度の高いTCR遺伝子が存在する事を確認した。現在TCR機能解析を進めているが、一つのTCR解析結果を報告する。TCR機能を探索するために、TCR遺伝子をヒト末梢血単核球(PBMC)由来T細胞に導入し、TCR導入T細胞(TCR-T細胞)を樹立した。さらに、TCR-T細胞がメラノーマ細胞を認識するか、患者 HLA と同じアリル遺伝子を導入したメラノーマ細胞株を作製し、TCR-T細胞反応性を検討した。その結果、ひとつのTCR-T細胞細胞が HLA-A2 導入メラノーマ細胞に反応した。その後の遺伝子発現解析等により、当該 TCR-T 細胞は Melan-A/MART1 分子にコードされる抗原ペプチドを認識する事が判明した。遺伝子変異にコードされるネオアンチゲン候補もスクリーニング中であるが陽性結果は得られていない。この結果から、患者腫瘍微小環境にはMelan-A/MART-1 を認識する TIL が存在したことを示唆する。これらの結果は、腫瘍微小環境を単細胞解析行う事により、腫瘍微小環境を作る細胞の一つである TIL の機能を推定できるに至ったと考える。
2: おおむね順調に進展している
本研究内において、腫瘍微小環境の単細胞解析から、TIL機能を特定するに至った例も確認出来た。研究課題として提案したTCR配列からの機能推定を達成したものと考える。今後、このような機能推定に至る例を蓄積し、腫瘍微小環境解析の解像度を上げたい。
これまでの研究遂行内容をさらに進め、症例数を蓄積する。単細胞解析から、様々な TCR解析結果が得られている。また、特定の TCR 配列に関しては、TCRが認識する抗原分子解明にも成功している。しかしながら、TCRが認識する抗原同定は1個のみである。機能的TCRの候補は現時点で多く残されている。この機能的TCR候補とは、TCR-T細胞が自己悪性黒色腫を認識したという事である。すなわち、機能的である、という点において担保されている。今後、これらのTCRが認識する抗原解析を進めると同時に、単細胞解析結果を包括的に解釈し、腫瘍微小環境の解析、特に免疫療法との関連性につき検討を進める。
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