研究課題
がん免疫療法は様々な悪性腫瘍で承認されてはいるものの、その奏効率は 10%~40% 程度と高いとは言えない。細胞傷害性T細胞 (CTL) 浸潤が多い症例では、免疫療法奏功例が多いと報告されている。しかしながら、腫瘍内へのCTL浸潤(腫瘍浸潤リンパ球:TIL)が多い症例においても、免疫療法不応の症例も多い。すなわち、TIL浸潤と、免疫療法有効性に一定の関連はあるものの、TIL浸潤は十分条件ではないのである。ここで我々は、免疫療法不応例かつTIL浸潤が多い症例において、TILは腫瘍特異的なのかという疑問を設定した。免疫チェックポイント阻害剤で治療された悪性黒色腫症例において、1細胞解析を行い、T細胞受容体 (TCR) レパトワ解析を行った。また、T細胞の1細胞 RNA-seq 解析を行い、T細胞の状態を解析した。TCRクロノタイプサイズが大きいTCR配列から、上位約10種類のTCR遺伝子を用い、TCR遺伝子導入T細胞 (TCR-T細胞)を作製した。悪性黒色腫組織から、悪性黒色腫細胞株を作製した。TCR-T細胞の悪性黒色腫細胞株反応性を、IFNγELISPOT法および、CD107a発現にて検討した。その結果、驚くべきことに、主要TCRクロノタイプの過半数は、腫瘍細胞株に反応を示した。この結果は、免疫療法不応性悪性黒色腫においてすら、腫瘍特異性CTLが腫瘍局所に多数浸潤していた事を示す。すなわち、免疫療法が効く要素は備わっていたものの、免疫療法不応性であったと言える。本症例は抗PD-1抗体にて治療された症例であるが、本症例においては、PD-1/PD-L1以外の免疫チェックポイント分子が、免疫逃避に関わっていたのではないかと考察している。今後、PD-1/PD-L1以外の免疫チェックポイント分子についても検索を続ける予定である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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