研究課題/領域番号 |
20H03461
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
谷田部 恭 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90280809)
|
研究分担者 |
藤田 史郎 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 研究員 (60612140) [辞退]
真砂 勝泰 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 研究員 (80338160)
加島 淳平 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 短期レジデント (80893883)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 肺腺癌 / KRAS変異 / 上皮内腺癌 |
研究実績の概要 |
KRAS変異の多い浸潤性粘液腺癌では肺炎様の広がりを示すタイプと結節性病変を形成するタイプとが存在する。浸潤性粘液腺癌の予後は通常の腺癌と同じであったがこの病変の広がり方によって大きく異なる予後、進展度を示すことが2219例の大規模研究で示すことができた(Ann Thorc Surg 2020). また、NGS解析を進めるうえで腫瘍細胞含有率の病理組織学的推定が過剰傾向になることを示したうえで、その解決方法を提示した。この結果によってより正確なNGS解析を進めることができるようになった点は、本研究においても有用な示唆を与えることができた。さらに、多様性の分子病理診断への応用として、まれな腫瘍であるNUT転座癌においてp63のアイソフォーム発現の違いを見出し、より幹細胞に近い細胞で発現するΔNp63の発現が優位であることを示し、扁平上皮癌に似たphenotypeというよりも、より幹細胞に近い細胞由来であることを報告し、これが診断上のピットフォールとなることを指摘したた(J Thorac Oncol 2020)。また、上皮内病変に相当する肺胞上皮置換性増殖に対応する放射線画像では、すりガラス様陰影を有する腺癌は予後が良いことから、新しいTNM分類に含めるべきか議論されているが、それに相当する組織像との対比がなされておらず、詳細な比較検討を行い、組織学的な上皮内病変の有無とは強く相関しているものではないことが分かった(論文投稿中)。さらにこのコホートにおけるドライバー変異を調べるとともに、KRAS変異を有する腺癌についての特徴を明らかにしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては共著論文も含め24編のpeer-review 英文誌への発表を行うとともに、J Thorac Oncol(IF 13.1)などインパクトファクター10点以上の発表が5編を占めていた。さらにこれらの検討のうちに次なるシーズも多く見いだされたことから、おおむね順調に推移していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度においては浸潤性粘液腺癌の進展様式に注目して研究を進めたが、そこから一歩進んでKRAS変異のタイプやisoformの違いについて検討を進めていきたい。特に変異特異的抗体についての検討とともに、タンパクとRNA発現との関係にも範囲を広げていけたらと考えている。また、臨床病理学的にKRAS変異は喫煙と関連が深く、AAHやAISなどの早期病変が少ないことから、喫煙における関連を検討していく予定である。
|