研究課題
がん間質において増殖するがん関連線維芽細胞(Cancer-Associated Fibroblasts, CAF)が、がんの進展に重要な役割を果たすことが明らかになってきている。CAFにはがんを促進する「がん促進性CAF」とがんを抑制する「がん抑制性CAF」が存在することも示されつつある。昨年度までの研究により、GPIアンカー型細胞表面タンパクMeflinが「がん抑制性CAF」のマーカーになること、CAFにMeflinの発現を誘導するとマウス膵がんの化学療法の感受性が改善することを示した。今回、ヒト非小細胞肺がん、腎明細胞がん、尿路上皮がんの症例を用いた免疫染色による解析の結果、がん間質におけるMeflin陽性CAFの多い症例(陽性率15-20%以上)と低い症例を比較すると、前者において免疫チェックポイント(IC)阻害剤の有効性が有意に高いことが明らかになった。また非小細胞肺がんのモデルマウスの系において、MeflinKOマウスと交配させることによりIC阻害剤の効果が低下し、一方CAF特異的にMeflinを過剰発現するとIC阻害剤に対する反応性が増強した。さらに、合成非天然型レチノイドAm80が、CAFにおけるMeflinの発現を効果的に誘導する試薬であることを証明した。今回、尿路上皮がんのマウスモデルを用いて、Am80を前投与後、IC阻害剤で治療すると、腫瘍縮小効果が有意に改善することが明らかになり、同時に腫瘍内ではM1様マクロファージが増加することを示した。Am80とIC阻害剤の組み合わせが、新たながん治療法の開発につながることを示した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Life Science Alliance
巻: 5 ページ: e202101230
10.26508/lsa.202101230
Oncogene
巻: 41 ページ: 2764-2777
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