研究課題
私達はこれまでの研究を通じて、細胞膜外で切断される遊離型TIM-4(sTIM-4)の存在を発見し、炎症細胞に発現するLMIR5と結合して、関節炎モデルマウスや喘息モデルマウスの病態形成に深く関わることを明らかにしてきた。そこで本研究は、疾患によってTIM-4を発現する細胞の種類によって炎症の慢性化に特徴的な違いがあるか検討するため、マウスsTIM-4の切断部位を同定し、これを変異させた非遊離型TIM-4マウスを作製して、各種疾患モデルにおける特徴的な機能の違いを検証することを目的とした。また炎症の定量化を目指し、ヒトsTIM-4を高感度に測定する方法を確立し、喘息患者さんや膠原病患者さんなどの血清からヒトsTIM-4を測定して、発症や病態との相関を検討して臨床応用に向けた基盤を構築することも目的とした。これまでに新たにラット抗ヒトTIM-4モノクローナル抗体を作製して、ヒトsTIM-4を高感度に測定することができるサンドイッチELISA法を構築した。現在、順天堂医院膠原病・リウマチ内科と連携を取り膠原病患者血清、及びバイオリソースバンク活用研究支援講座と連携を取り、健常者血清中のsTIM-4測定の許可を順天堂大学医学系研究等倫理委員会に申請中である。またsTIM-4の切断部位を同定するために大阪大学蛋白質研究所に技術的および物質的なサポートをいただき、TIM-4-PAタグを構成するpCD-PAx3発現ベクターを構築した。しかしながら、コロナ禍により必要な試薬が手に入らず先に進めずにいる。
3: やや遅れている
当初の予定では、抗ヒトTIM-4モノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISAにより、sTIM-4を高感度に検出する方法の確立を目指し、系を確立した後に、喘息患者さんや膠原病患者さんの血清を採取してsTIM-4の検出を試み、発症と病態の進行状態にsTIM-4値がどう相関するか検討することを目的とした。これまでに抗ヒトTIM-4モノクローナル抗体をラットから作製し、sTIM-4を高感度に測定する高感度サンドイッチELISAを構築し、すでに喘息患者さん124例の血清中のsTIM-4を測定し、血清sTIM-4が喘息患者さんの喘息重症度に相関していることを示した。現在、膠原病患者さんと健常者の血清中のsTIM-4を測定比較する為に、順天堂大学医学系研究等倫理委員会に研究計画を申請中である。またヒトsTIM-4の切断部位を同定するために、これまでにTIM-4の細胞内領域にアミノ酸のヒスチジンが6つ並ぶタグをつけたタンパク質を発現する白血病細胞株K562を作製。抗ヒスチジン抗体を用いて切断後に細胞に結合した状態のTIM-4を回収、液体クロマトグラフィー質量分析計を用いてsTIM-4の切断部位の同定を試みたが、タンパク質の回収量が少なく十分な計測ができなかった。これを解消する為に、大阪大学蛋白質研究所から技術的および物質的なサポートをいただき、TIM-4-PAタグを構成するpCD-PAx3発現ベクターを作製した。HEK293T細胞にTIM-4-PA/ pCD-PAx3を導入し、細胞溶解液から抗PA抗体-ビーズにより切断部以下のTIM-4が免疫沈降できるか検討を行う予定でいたが、コロナ禍により必要な試薬が手に入らず入荷を待つ状態である。
ヒトsTIM-4を高感度に検出できるELISA系を確立したので、順天堂大学医学系研究等倫理委員会の承認のもと、膠原病患者さん、さらには健常人から血清を採取してsTIM-4の測定を試みる予定である。発症と病態の進行状態にsTIM-4値が相関するか検討を行うが、特にそれぞれの疾患の間に差異があるか否か分析を行う。すでに健常人血清を確保するために研究等倫理委員会へ研究計画を申請し、審査中である。承認次第、種々の膠原病患者さんの血清とともに健常人血清も測定予定でいる。またsTIM-4の切断部位を同定するために、TIM-4-PA/ pCD-PAx3と抗PA抗体-ビーズを用いて切断後に細胞に結合した状態のTIM-4-PAを回収、液体クロマトグラフィー質量分析計を用いてsTIM-4の切断部位を同定する予定でいる。さらに、TIM-4発現制御に関わる転写調節因子を見出すとともに、免疫組織染色に使用可能な抗マウスTIM-4抗体を作製する予定である。作製したTIM-4抗体を用いて免疫組織染色を行い、関節炎モデルマウスの関節組織や喘息モデルマウスの肺病理組織における、これら分子の発現の局在を解析する。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Cell Rep
巻: 34 ページ: 108734
10.1016/j.celrep.2021.108734.
Allergol Int
巻: 70 ページ: 343-350
10.1016/j.alit.2020.12.004.
https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/meneki/home.html