研究課題/領域番号 |
20H03473
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
田中 正人 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (00294059)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単球 / マクロファージ / 制御性 / 組織障害 / 修復 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、マウスLy6C陽性単球の中に、これまで知られていた炎症性単球とは機能の異なる新規サブセット(Ym1+Ly6C+単球)を同定した。この細胞は、全身性炎症や腸炎を誘導したマウスの回復期にのみ骨髄で増産され、炎症の収束と組織修復を担う細胞であることが分かった。実際、本細胞の消去は、腸炎の回復を有意に遅延させることを見出している。本研究では、この制御性単球の動態と機能を分子レベルで明らかにすることで、組織傷害の回復期における単球由来マクロファージの役割を解明し、傷害組織と骨髄の臓器連関の実体を明らかにすることを目指している。 本年度我々は、骨髄の血球前駆細胞を用いたin vitroでの制御性単球分化誘導実験系を用いて、制御性単球の分化誘導促進因子の探索を行った。その結果、LPSで刺激したマクロファージの培養上清中に、制御性単球の分化誘導促進因子が含まれていることを見出した。現在、生化学的及び分子生物学的解析によりこの因子の同定を試みている。 これまでYm1+Ly6C+単球の解析には、我々が開発したYm1発現細胞を可視化できるマウス(Ym1-Venusマウス)を使用する必要があり、このことが同細胞の解析を大きく制限していた。そこで、マウス免疫細胞の表面マーカー分子の網羅的な解析を行うことで、同細胞特異的な細胞表面マーカーの同定を試みている。今後は、遺伝子改変マウスを使用せずに、同細胞の解析が可能となる研究手法の確立を目指し、同細胞の骨髄での分化メカニズムの解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、我々が同定した、新規単球サブセット(Ym1+Ly6C+単球)の動態、分化、機能を分子レベルで明らかにすることを目指している。この目的を達成するために、in vitroでの分化誘導系を開発し、さらに、本単球サブセットの分化誘導を促進する因子の同定の先駆けとなる実験結果を得ている。また、同細胞の解析と分化経路の解析に資することが期待できる細胞表面マーカーの同定を目指した研究も順調に進んでおり、今後、研究の進捗が期待できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、傷害組織から骨髄に伝達される制御性単球の分化促進機構の解明を目指して、LPSで刺激したマクロファージの培養上清中の分化誘導促進因子の同定と、その分化誘導促進メカニズムを明らかにすることを目指す。 また、同細胞特異的表面マーカーの同定と、それを用いた同細胞の解析手法の確立並びに、同細胞の骨髄での分化経路の解明を目指す。
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