研究課題/領域番号 |
20H03474
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
上羽 悟史 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 准教授 (00447385)
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研究分担者 |
七野 成之 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (70822435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | TCRレパトア / CD8 T細胞 / 免疫チェックポイント / 抗原提示経路 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らが開発した独自のTCRレパトア解析手法に基づき提唱する、【担がん宿主成体内における応答性に基づく新たなT細胞クローン分類法】についてその免疫学的基盤を確立し、難治がんに対するTCR遺伝子療法に不可欠な最適クローン選択に応用するための基礎を築くことを目的とした。2020年度はB16メラノーマ、LLC肺がん細胞株を用いたマウス皮下腫瘍モデルにおいて制御性T細胞の除去によるCD8+ T細胞応答の活性化を誘導する抗CD4抗体治療および抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体等の免疫チェックポイント阻害が腫瘍・腫瘍所属リンパ節重複クローンに及ぼす影響を解析し、抗CD4抗体および抗PD-L1抗体がいずれも重複クローンの割合を増やすことを明らかにした。また、MHC class I欠損腫瘍細胞株を用いた皮下腫瘍モデル、および抗原認識に伴う脱顆粒を検出するLamp assayを組み合わせ、Tumor major clone が腫瘍細胞を直接抗原提示経路依存的なクローンであるという仮説を検証した。β2m-KOではtumor major clone が有意に減少したことから、tumor major clone の誘導には直接抗原提示経路が重要で有ることが明らかになった。腫瘍浸潤CD8+ T細胞と腫瘍細胞または腫瘍浸潤白血球を共培養するLamp assayを用いて、tumor major cloneは直接抗原提示のみならず、間接抗原提示も認識できるクローンであることが明らかとなった。 本研究を基盤に、担がん宿主における腫瘍特異的なCD8+ T細胞クローンの機序が解明され、TCR遺伝子療法などの新たながん免疫に繋がることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々のマウス皮下腫瘍モデルを用いて、未処置および抗CD4抗体、抗PDL1抗体、抗CTLA4抗体治療時の腫瘍および腫瘍所属リンパ節CD8+ T細胞のTCRレパトア解析・臓器間重複クローン解析を行い、各モデルと治療介入に特徴的なクローン動態を明らかにする事が出来た。また、CRISPR-Cas9システムを用いて作成したMHC class I欠損腫瘍細胞株を用いて、腫瘍細胞による直接抗原提示がTumor major cloneの誘導に不可欠であること、LAMP assayを用いてtumor major cloneが直接抗原提示と間接抗原提示の双方を認識出来ることを明らかに出来た。さらに、1細胞についてTCRalpha/betaペアの同定と遺伝子発現解析を同時に解析可能なsingle-cell TCR/RNAseq解析技術を確立し、予備検討により既存技術に比較し高いTCRa/bペアのペアリング効率と遺伝子検出感度を持つことを見いだしており、次年度以降の研究に向けて重要な技術基盤を確立出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に確立したscTCR/RNAseq解析技術を用いて複数のマウス皮下腫瘍モデルにおける代表的なtumor major, dLN major, double major cloneを同定し、その遺伝子発現パターンを解析する。また、マウスでは同一個体を用いた経時的なクローン応答の解析が困難である。これを解決するために、両側腫瘍モデルを作成し、両側の腫瘍、腫瘍所属リンパ節を異なるタイミングで採取することで、ヒトの腫瘍生検と同様の解析が出来ないかを検討する。
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